(写真はイメージです/PIXTA)

戦後の人口増加から一転、人口減少期へと突入した日本。今後の社会の変化について、ニッセイ基礎研究所の井上智紀氏が考察します。

2.人口比率

15歳未満の「年少人口」、15~64歳の「生産年齢人口」、65歳以上の「高齢者人口」の3つの区分ごとの構成比としてみると、1965年当時には25.7%と4分の1を占めていた年少人口比率は少子化の進展に伴って低下の一途を辿っており、1990年時点で18.2%と2割を下回り、2020年には12.1%と約1割にまで低下している。一方で、高齢者人口の割合である高齢化率では、1965年時点では6.3%に過ぎず、1990年時点でも12.1%と、足元の年少人口比率と同程度の割合であったものが、2020年には28.7%にまで上昇し、2030年には31.2%に達するものと予測されている。

 

もはや15歳未満の子どもは人口全体の1割程度と、1990年当時の高齢者と同程度しかおらず、今後ますます減少していくことが見込まれている。コロナ禍で出生数が大きく減少している影響を踏まえれば、このような年少人口減少の速度はさらに加速していくことが危惧されよう。

 

【図表2】
【図表2】

 

また、全体としての人口が減少する中、人口ピラミッドでみたとおり年少人口の減少と高齢者人口の増加が進んだ結果、両者を合わせた従属人口*2比率は1990年以前には30%程度であったものが、足元では40%を超え、2030年には42.3%まで上昇する見込みである。こうした従属人口比率の上昇が、生産年齢人口にあたる世代にかかる負担と不可分の関係にあることは明らかであり、足元の社会のあり様にあわせて定義を見直していくことも必要ではないだろうか。

 

社会保障制度を始め、社会全体に対する定着まではまだ多くの時間を要すると思われるものの、既に高齢者の定義については75歳以上に変更してはどうかとの提言も示されるなど、議論が進められている。

 

一方で、高齢者や年少者を扶養する立場とされる生産年齢人口については、現時点では定義に対する疑義を示されることもないままである一方、前述の通り国内における高校進学率の高さを鑑みれば、15~19歳の大半が実態としては扶養される立場にありながら比率の計算上だけでは支え手側にカウントされている。今年から実施された成人年齢の引下げに反する面はあるものの、年少人口を19歳までに拡張すること(生産年齢人口に含める年齢下限の引き上げ)も検討に値するとはいえないだろうか。

 

実際に、高齢者の定義のみを75歳以上に限定した場合の従属人口比率は2020年時点で26.9%であり、2030年でも30.3%と1990年の従属人口比率と同水準に留まることとなる。現実に即して生産年齢人口から15~19歳を除外し、年少人口と併せてみても2020年時点では31.5%と1990年時点と同程度に留まることになる。

 

これらの定義は、現実社会における諸制度の根幹にかかわるものでもあり、定義の見直しはそのまま、諸制度の見直しの議論に直結する。制度の変更は相応の痛みが伴うこともあり、影響の範囲や規模の大きさなど、多方面から議論を尽くし、慎重に検討を進めていくことが求められよう。しかし、支え手である現役世代の負担が限界に達するまでに残された時間もまた、そう多くはないのではないだろうか。

 

*2:従属人口は、15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口を合計したものである。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年12月26日に公開したレポートを転載したものです。

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