報告書の提出や社会保険への加入が義務に
前回は歯科医院を法人化することのメリットについて説明しました。一方、デメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
・決算ごとに報告書を作成して都道府県に提出しなければならない
手続きが難しいため会計事務所や行政書士事務所に依頼することになり、顧問料や決算料が増加します。
・社会保険の加入義務が発生する
スタッフの健康保険と厚生年金の保険料の半分を、法人が負担しなければなりません。
・交際費が年間800万円しか認められない(平成25年4月1日以後開始事業年度)
個人の場合は接待交際費に上限がありませんが、法人の場合は一定額(800万円)か接待飲食費の額の50%相当額のいずれか多い金額までしか認められません。
第三者の「乗っ取り」によって財産を失った院長も・・・
また、医療法人は乗っ取りのリスクが高いというデメリットがあります。株式会社では株数をより多く保有している人に、発言権や議決権があります。しかし医療法人の場合は、1人に1議決権があります。
たとえば医療法人設立の際に90%を出資したAさんと、5%しか出資していないBさんとCさんがいるとします。出資金に関係なくそれぞれ1議決権を持っているため、BさんとCさんが結託すれば、Aさんを罷免することができるのです。
実際、自分の意見に賛同する人間をどんどん引き入れて、法人設立者を追い出したという話も耳にします。法人化によって受けられるメリットは大きなものですが、医療法人を他者に乗っ取られて財産を失ってしまうケースが、現実に存在しています。心から信頼できるパートナーがいるかどうか。法人化を進めていく上で、それは非常に重要な要素といえます。
さらに、一度医療法人を作ってしまうと解散が難しいという側面もあります。医療法人を解散し、役員退職金等を支給しても残余財産がある場合、以前は出資割合に応じて個人に割り振られていました。しかし第5次医療法改正後に新たに設立される医療法人は、出資限度額を超えるものについては国または地方公共団体に帰属することになりました。
つまり努力をして利益を出し、内部留保を増やして法人の財産として残しても、解散するときはその財産を個人が受け取ることはできないのです。
この改正以来、院長が引退・退職する際は、閉院ではなく、身内や第三者に継承をさせたり、売却をするケースが増加しました。これについては後ほど詳しく説明をします。