(画像はイメージです/PIXTA)

相続の際、亡くなった方が営んでいた事業を相続人が引き継ぐケースがありますが、もし青色申告制度を利用するなら、「青色申告承認申請書」の届出が必要です。届出期限は、亡くなった日や、亡くなった方が青色申告制度を利用していたかどうかで異なってくるため、注意が必要です。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

相続で自営業を承継…確定申告はこれまで通りでOK?

生徒:亡くなった親が自営業をしていて、子どもがその跡を継いだとき、確定申告はいままで通りのやり方でいいのでしょうか?

 

先生:確定申告は「青色申告」でしたか? 青色申告とは、毎日の取引を会計帳簿に記帳し、それに基づいて申告をおこなうことで、税金が安くなる取扱いが受けられる制度をいいます。

 

生徒:たしか、青色申告だと聞いています。

 

先生:事業を引き継いだ人が青色申告をおこなうためは、税務署への届け出が必要なんです。

 

生徒:そうなんですか!

 

先生:はい。「青色申告承認申請書」による申請が必要です。

 

生徒:いままでと同じ事業でも必要なんですか?

 

先生:はい。事業を相続しても、青色申告の承認までは引き継がれないんです。事業を引き継ぐ人が、新たに青色申告承認の申請をしなければなりません。

 

生徒:そうなんですね! ちなみに、青色申告できるのはどのような人ですか?

 

先生:事業所得がある人に加えて、不動産所得がある人ですね。

 

生徒:先生、もともと別の事業をやっていた人が、相続によって親の事業を引き継いだ場合はどうなりますか?

 

先生:もともと事業をしていて、相続以前に自分の事業ですでに青色申告をおこなっていた場合には、青色申告承認申請書の提出は不要です。

 

生徒:なるほど! 確定申告のシーズン前に早めに申請しておかないといけませんね。

 

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青色申告の承認申請期限、準確定申告前になることも!

生徒:先生、相続のときには「準確定申告」をおこないますが、これは確定申告とはちがうものなんですか?

 

先生:亡くなった方に代わって相続した人が確定申告をすることを準確定申告といいます。準確定申告は、相続した日の翌日から4ヵ月以内に申告と納税の両方をおこなわなければいけません。

 

生徒:4ヵ月以内ですか! けっこう忙しいスケジュールですね。では、相続した人が亡くなった方の事業を引き継ぎ、青色申告をおこないたいなら、準確定申告のときにその承認申請をすればいいんですね?

 

先生:そうとも限りません。亡くなった時期によっては、準確定申告の期限よりも先に青色申告の承認申請の提出期限がくることがあるので注意してください。

青色・白色とも、亡くなった日により提出期限が変わる

生徒:青色申告承認申請の提出期限はどのように決められているのですか?

 

先生:亡くなった方の事業を続ける場合には、亡くなった方が白色申告をしていたか、青色申告をしていたかによって、相続した人による青色申告承認申請書の提出期限が違います。

 

生徒:青色申告でも白色申告でも、亡くなった日によって期限が変わるんですね。

 

先生:はい。色々なケースがあるので、必要ならメモを取ってくださいね。まず、亡くなった方が青色申告をおこなっていた場合は、相続開始日が年初から8月31日までであれば、4ヵ月以内に青色申告承認申請書を提出しなければいけません。

 

生徒:それなら、準確定申告と同じタイミングですね。

 

先生:そうですね。相続開始日が9月1日から10月31までであれば12月31日までに、11月1日から12月31日までであれば翌年2月15日までに青色申告承認申請書を提出しなければいけません。

 

生徒:わかりました。

 

先生:次に、亡くなった方が白色申告をしていた場合ですが、相続開始日が年初から1月15日までであれば3月15日までに、1月16日から12月31日までであれば相続開始日から2ヵ月以内に青色申告承認申請書を提出しなければいけません。

 

生徒:白色申告から青色申告に変えたいときは、気を付けなければいけませんね。

 

先生:そうですね。期限を過ぎるとできなくなりますからね。

 

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生徒:本当にいろいろなケースがあるんですね!

 

先生:相続した人が青色申告する場合、青色申告承認申請書のほかに、必要な届出もあります。まず、「所得税の青色申告の取りやめ手続」です。

 

生徒:取りやめ手続きとはなんですか?

 

先生:青色申告の承認を受けていた方が亡くなったことにより、青色申告を取りやめる手続きが「所得税の青色申告の取りやめ手続」です。提出期限は、青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日までです。

 

生徒:白色申告に変更する、という手続きですね?

 

先生:そうです。次に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出」です。

 

生徒:これはどのようなものでしょう?

 

先生:相続して事業を継ぐことによって、給与の支払をしている事務所を移転し、引き続き従業員を雇う場合、または新しく事務所をかまえた場合に必要な届出です。提出期限は、事務所の移転があった日または新しくかまえた日から1ヵ月以内です。

 

生徒:開設や移転のときは1ヵ月以内ですね。

 

先生:はい、そうです。あと、「個人事業の開業届出・廃業届出等手続です。相続して新しく事業を始めたときに必要な届出です。提出期限は、以前事業をしていた方が亡くなった日から1ヵ月以内です。

 

生徒:いままでの事業のほかに、新しい事業を始めたときということですか?

 

先生:そうですね。最後に「青色事業専従者給与に関する届出手続」です。以前事業をしていた方が亡くなる前から青色事業専従者だった人に対して、事業を継いだあとも引き続き青色事業専従者として給与を支払い、その給与を必要経費にしたい場合に必要となります。提出期限は、必要経費に算入したい年の3月15日までです。ただし、その年の1月16日より開業した場合や新しく専従者が増えた場合は、その日から2ヵ月以内となります。

 

生徒:青色事業専従者とはなんですか?

 

先生:青色確定申告する人と一緒の生活資金で暮らしている15歳以上の家族や親族の従業員のことです。家族経営と呼ばれる事業の従業員はこのケースが多いですね。

 

生徒:それは知りませんでした。家族も従業員として認められるんですね!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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