「子育て初期」に偏重…実態を直視できていない少子化対策
「出産・子育て応援給付金」に加え、2023年4月からは「出産育児一時金」が現行の42万円から50万円へと増額されます。また、個人事業主・フリーランスや非正規雇用の労働者に対する「出産後給付」の制度が検討されています。
これらの施策により、子育ての負担を軽減し、少子化対策につなげるねらいがあると考えられます。
しかし、一連の施策は、妊娠・出産、初期の子育てのサポートに偏重しており、少子化対策の抜本的解決になるかというと、疑念を抱かざるを得ません。依然として、以下の課題が残っています。
・働きながら育児をする環境の整備の立ち遅れ
・進まない教育費の負担軽減
◆働きながら育児をする環境の整備の立ち遅れ
今日、いわゆる「女性の社会進出」が進み、共働き世帯が多数となっています。また、経済の停滞が続くなかで国民の所得が伸びず、共働きでなければ家計を維持できないという実態があります。
それを踏まえて、夫婦がともに、過度の負担を感じることなく育児に取り組める環境の整備は急務です。
ところが、依然として、育児の負担はもっぱら女性に集中する傾向があります。女性が育児のためキャリアアップを諦めざるをえなくなったり、男性の育児休業の取得に勤務先が難色を示したりといった事態は、なかなか改善が進んでいません。
子どもが急に熱を出して退勤せざるをえなくなった場合に、申し訳なさそうに振る舞わなければならない雰囲気がある、といった話もよく耳にします。啓蒙も進んでいないということです。
与党の多数を占める自民党が、一部に男尊女卑の気風をいまだ色濃く残していることも影響しているのかもしれません。
「両立支援補助金」等、雇用主に特典を与える施策はありますが、むしろ、非協力的な雇用主にはペナルティを与えるなど、実効性をもたせる取り組みが求められています。
◆進まない教育費の負担軽減
高騰する教育費の負担を軽減する施策も重要です。
経済が長期間にわたり停滞し、国民の所得が伸びていないという状況であるにもかかわらず、教育費は高騰の一途をたどっています。
文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査」の結果によれば、私立大学の授業料の平均値は、2001年(平成13年)に年799,973円だったのが、2021年(令和3年)には年930,943円まで上昇しています。
加えて、ここ数年話題になっている「老後2,000万円問題」に象徴される老後不安の問題、増税、物価上昇等が重なっています。「こんな状況で子どもなんて持てない」「子どもはぜいたく品」という言葉が囁かれるのも、やむを得ない状況です。
高騰する教育費への対策を打たなければ、意欲も能力もある子どもの芽を摘み、ひいては日本の将来を担う有為な人材の育成の機会を損なうことになりかねません。
政府・国会は、「出産・子育て応援給付金」の支給、4月からの出産育児一時金の増額といった子育て初期の支援にとどまらず、仕事と育児を両立する環境の整備や、教育費の高騰といった問題に正面から取り組み、実効性のある施策を打ち出していくことが急務であるといえます。
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