前回は、営業キャッシュフローの重要性について説明しました。今回は、「黒字倒産」の実態について例を挙げて見ていきます。

投資家にショックを与えた上場企業の黒字倒産

2015年3月16日、東証上場企業の「江守グループホールディングス」が突如として462億円もの巨額の特別損失を出し、234億円の債務超過に転じたことを発表しました。株価は発表前の914円から323円まで下落、前年の9月の高値2156円からすると6分の1にまで下がりました。

 

投資家たちの間に「江守ショック」ともいうべき衝撃が走ったわけですが、実は江守グループホールディングスは2010年から2014年の5年に渡り、好調な売上高を公表していました。中国への事業拡大を果たし、順調に売上を伸ばしていたのです。ところが、蓋を開けてみると「倒産」……。

 

この背景にあったのも、営業活動によるキャッシュフローの不振でした。江守グループホールディングスの2014年3月期の営業キャッシュフローを見てみると、マイナス51億9700万円とあります。2013年3月期もマイナス26億7000万円です。

経営にとって大きなネックとなる売掛金の回収

遡ること5年間、営業キャッシュフローはマイナスでした。これは明らかに「本業キャッシュを得るどころか、むしろ失っている」状態です。モノを売るには売ったものの、肝心の資金回収ができていなかったのです。

 

これほどの巨額の損失を抱えておきながら、銀行からは多額の融資を受けていたところを見ると、粉飾決算などの不正があった可能性もありますが、いずれにしてもこの事例は「売掛金の回収が経営にとって大きなネックである」ことの証左になるでしょう。

 

中小企業においては、もともとの資金力が小さいですから、大きな会社よりも輪をかけて資金回収には力を割かねばなりません。

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    本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『低成長時代を生き抜く中小企業経営9カ条』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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