(※写真はイメージです/PIXTA)

動物学者にとっても、脳科学者にとっても重要な研究対象であるフクロウ。研究する際にはフクロウの繁殖が不可欠ですが、多くの研究室が挑戦してもなかなかうまくいかず、頭を悩ませていました。そのようななか、ある研究者がついに繁殖に成功します。成功に至った方法を脳科学者の茂木健一郎氏が解説します。※本連載は、茂木健一郎氏の著書『「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方 いま必要な、4つの力を手に入れる思考実験「モギシケン」』(日本実業出版)から一部を抜粋し、幻冬舎ゴールドオンライン編集部が本文を一部改変しております。

マーク小西氏がフクロウの繁殖に成功したワケ

ここで、モギシケンです。次の設問を考えてみてください。

 

【モギシケン】仮説修正力をはかる

Q.マーク小西さんの研究室だけがフクロウの繁殖に成功した理由を考えてください。この3つの中に正解があります。あなたはどれだと思いますか?

 

<次から1つ選んでください>

➀食べきれないほどの餌を与えた
②大きな巣を用意した
③1日中真っ暗の状態で飼育した

 

<茂木健一郎のワンポイント解説>

正解は、「①食べきれないほどの餌を与えた」。たったこれだけのことでした。

 

でも、僕たちには「動物に食べきれないほど餌をあげるのはよくない」という思い込みがありませんか? 小さい頃、金魚に餌をやりすぎて死なせたとか、ペットの猫がほしがるだけあげたらお腹を壊したとか逆に太ったとか、そういう経験から、動物に餌をあげすぎてはいけない」と考える人が多いのではないでしょうか? そこをマーク小西さんの研究室は、仮説力で打破しました。

 

フクロウの餌にはネズミをあげるのですが、繁殖に成功できなかった研究室ではフクロウが一食に食べきれる量だけをあげていたといいます。動物を育てたことがある方ならなんとなく想像できるかもしれませんが、動物はその習性に沿った育てられ方をしたほうがうまくいきますよね?

 

メンフクロウは夜行性で、昼間は木のウロ(洞窟状の空間)の中にいて、子育て期には親鳥とひなにジャストサイズの巣をつくっていたりします。それに合わせた工夫は、ほかの研究室でもしていたはずです。

 

「食べきれないほど豊かな環境」が引き金に

一方、マーク小西さんの研究室では、食べても残るぐらいの量の餌をあげました。そうしたら、「食べても残るぐらい餌がある豊かな環境だ」ということが引き金になって子づくりを始めたというんです。

 

あとになって、「確かに餌が豊富なほうがいいよね」と言うことは簡単です。でも、どの研究室でもうまくいっていないときにその仮説を導き出せるのは、トライ&エラーを繰り返す仮説修正力の高さによるものでしょう。

 

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次ページ高精度な仮説を立てるための「キホン」

※本連載は、茂木健一郎氏の書籍『「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方 いま必要な、4つの力を手に入れる思考実験「モギシケン」』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方 いま必要な、4つの力を手に入れる思考実験「モギシケン」

「本当の頭のよさ」を磨く脳の使い方 いま必要な、4つの力を手に入れる思考実験「モギシケン」

茂木 健一郎

日本実業出版社

いまの時代、ただ勉強ができるだけではダメで、どんな場所でも生き抜ける「本当の頭のよさ」が必要。それは誰もが思うことではないでしょうか? 脳科学者である著者は「情緒に流されない力」「地図を読み換える力」「アニマ…

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