●米株は年明け以降、景気後退で不安定な動きも、年央頃の景気底打ちとともに上昇余地拡大。
●2023年12月末のS&P500指数は4,150、ダウ平均は35,000、ナスダックは11,520を見込む。
●ただ翌年の米利下げと一段の景気回復を織り込んだ場合、3指数の年末着地は大きく上振れも。
米株は年明け以降、景気後退で不安定な動きも、年央頃の景気底打ちとともに上昇余地拡大
2023年の米国株を展望するにあたり、はじめに米国経済の見通しを確認します。12月19日付レポートで解説した通り、米国の実質GDP成長率は、前期比年率で2023年1-3月期が+0.4%、4-6月期が-0.1%、7-9月期が+0.5%、10-12月期が+0.9%を予想しています。米国経済は、まもなく景気後退(リセッション)入りするものの、軽度なものにとどまり、景気は2023年4-6月期頃に底を打ち、その後は緩やかな回復基調をたどると考えます。
フェデラルファンド(FF)金利は、2023年3月に4.75%~5.00%に達したあと、年内いっぱい据え置かれることで、深刻なリセッションの回避と、インフレの沈静化が実現されるとみています。このシナリオに基づけば、米国株は年明け以降、しばらくは厳しいマクロ環境のなか、不安定な値動きが予想されますが、米物価の落ち着きと利上げの終了、そして景気の底打ちが確認されるにつれ、上昇余地は拡大すると思われます。
2023年12月末のS&P500指数は4,150、ダウ平均は35,000、ナスダックは11,520を見込む
次に、2023年の米国株について、弊社の見通しをご紹介します。基本的には、レンジ相場のなか、緩やかな持ち直しを予想しており、具体的な数値は【図表】の通りです。
2023年12月末の着地水準は、S&P500種株価指数が4,150ポイント、ダウ工業株30種平均が35,000ドル、ナスダック総合株価指数が11,520ポイントとなっています。前述の通り、目先は景気後退が相場の重しとなるものの、景気底打ちとともに、持ち直すという見方です。
なお、S&P500指数の4,150ポイントについては、2023年12月末の予想1株あたり利益(EPS)を240ポイントと想定し、株価収益率(PER)を17.29倍で算出しています。市場で予想されているEPSが230ポイント程度ですので、弊社は市場予想よりも、やや改善方向を見込んでいることになります。また、PERの17.29倍は、現時点での水準とそれほど変わりません。
ただ翌年の米利下げと一段の景気回復を織り込んだ場合、3指数の年末着地は大きく上振れも
また、2023年を通じた米国株の動きとしては、弊社のマクロ経済見通しを踏まえると、1-3月期は米インフレと景気減速の度合いをにらみ「一進一退」、4-6月期は米景気の底打ちで「持ち直し」、7-9月期は夏枯れの季節性もあり、持ち直し一服で「横ばい」、10-12月期は「一段高」が見込まれます。弊社は2024年の1-3月期に米利下げ開始と景気の更なる回復を予想しており、10-12月期はこれを織り込む形での一段高が想定されます。
リスクは米インフレの高止まりと利上げが長期化し、景気と株価が大きく下振れるケースですが、弊社はこれをサブシナリオと位置付けています。実際に10-12月期の上昇が明確となれば、2023年12月末のS&P500指数は、弊社予想レンジ上限付近である4,500ポイント(EPSが250ポイント、PERが18倍)に達しても、それほど違和感はなく、ダウ平均、ナスダックも同様にレンジ上限程度の上振れは十分起こり得ると考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2023年の「米国株」見通し【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト