「待機資金」が多額に積み上がった戦略の回避
資金調達額の増加はビンテージ年のパフォーマンスにリスクをもたらします。新型コロナ危機による好不況のサイクルのなかで、プライベート・アセットの資金調達額は好調に推移しました。
しかし、ドライパウダー(待機資金)の積み上がりは一定ではなく、資金調達額が急増した戦略もあれば、安定している戦略もあります。
私たちは長年にわたり、資金調達額の長期的なトレンドからの偏差を、そのビンテージ年のパフォーマンスの早期指標として研究してきました。その結果、両者の間には負の相関関係があることがわかりました。
資金調達額が長期的なトレンドを上回った場合、ビンテージ年のパフォーマンスはマイナスの影響を受けます。これは「ドライパウダー・オーバーハング」として知られています。
レイトステージ/IPO前のベンチャー・キャピタルやグロース・キャピタルでは、近年、資金調達額が長期トレンドを大きく上回っており、これが2021年末に始まった強い調整の一因となっています。
大型バイアウトも程度は異なりますが、同様の挙動を示しました。逆に、小型バイアウトの資金調達ダイナミクスは、はるかに安定しています。このため、大型バイアウトと小型バイアウトの間にバリュエーション・ギャップが生じ、大型バイアウトにおける負債の絶対的水準が上昇しました。
私たちは、ドライパウダーが通常の水準に低下するまで、こうしたオーバーハングを伴う戦略を避けるよう、投資家に助言しています。
しかし、ドライパウダーが正常な水準に戻るためには、数四半期から数年間を擁する場合もあるでしょう。
特に市場の荒天時には、将来の投資方針を立て、妥協しないことが大切
プライベート・アセットへの投資も、景気後退の影響を受けないわけではありません。
2023年にかけて、米国、欧州、英国は長期的な景気減速に直面すると予想されます。ドライパウダー・オーバーハングなどの問題も考慮すると、より慎重な姿勢が重要です。
しかし全体的に見れば、投資家はプライベート・アセットのバリュエーションに、比較的高い回復力が期待できることを示唆するデータが多くあります。
私たちは、安定的な投資ペースを目標とし、長期的なトレンドに注目することで、投資家がプライベート・アセット・ポートフォリオを適切に管理するための、多くの方法があると信じています。
福澤 基哉
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
執行役員/プロダクト統括
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