海外で働く「フィリピン人労働者」…再び、母国の経済を救うか

12月26日週「最新・フィリピン」ニュース

海外で働く「フィリピン人労働者」…再び、母国の経済を救うか
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏による、最新のフィリピンレポート。今回は、フィリピン経済に大きな影響を与えているインフレの現況と、OFW送金状況を中心にみていきます。

OFWの送金増でインフレの影響、低下の可能性

 

フィリピン中央銀行(BSP)は、米中央銀行FRBの0.50%利上げに歩調を合わせ、政策金利を5.5%に引き上げました。BSP総裁メダラ氏は、米国の政策金利4.25%~4.50%に対して1%のスプレッドを維持する計画を継続しています。

 

BSP総裁はまた、2022年通年のインフレ見通しを5.8%としました。2023年の平均インフレ率は4.5%に低下し、2024年には2.8%にまで下がると予想しています。

 

また海外で働くフィリピン人労働者(OFW)の10月の送金額は32億2千万米ドルで、前年同月の31億1千万米ドルに比べ3.5%増加し、1~10月の累計で297億1千万米ドルとなり、対前年3.1%の伸びとなりました。

 

アメリカ大陸と米国からの送金が好調で、10月までの累計送金総額は前年同期比それぞれ4.6%増、5.0%増となり、成長を支えました。これらの国々からの送金総額は、全体の88%を占めています。

 

フィリピンペソは、ドルに対して、2021年10月から2022年10月までの12ヵ月間で10.4%下落しました。これが、ドルを稼ぐOFWには、追い風となり、消費者の購買力を高め、個人送金の増加に寄与しています。

 

このことで、物価の急上昇にもかかわらず、フィリピンの消費が底堅いことの一部が説明できます。OFWの収入・送金は、過去のインフレ局面でも、経済停滞を緩和してきた実績があります。

 

2023年、世界的な景気後退が予想されていますが、この局面でもOFWの送金が、経済停滞を緩和する要因となる可能性があります。

経済特区進出企業…完全在宅勤務が可能に

 

フィリピン経済特区庁(PEZA)は、投資総額980億ペソのIT~BPM企業(BPO)786社を、投資委員会(BOI)に登録移転したことを明らかにしました。この制度により、企業は財政的なインセンティブを維持したまま、従業員の在宅勤務(WFH)を完全に実施することができるようになります。

 

PEZAの推薦を受けた企業のうち、627社に登録証が渡され、WFHを利用することができるようになりました。IT~BPM業界の成長と競争力強化のためには、より多くの人材を惹きつけ、引き留めることができるようになるのは良いことです。

 

一方で、オフィスリース業界にとっては課題になります。PEZAからBOIへの登録変更により、より多くのIT~BPM企業が100%WFHの体制を採用することが認められ、経済特区に拠点を置く必要がなくなります。その結果、将来のオフィススペース需要が減少するか、あるいは現在のオフィス規模を縮小する方向に向かう可能性があります。

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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