③老人ホームに入居した後、自宅が賃貸や事業のために使用されていないこと
老人ホームに入居した父について、上記①要介護等の認定要件 ②老人ホームの施設要件を充たすことを前提に、いくつかの事例を検討していきましょう。
父が老人ホームに入居し空き家となっていた自宅を、第三者に賃貸、または事業のために使用した場合には、小規模宅地等(居住用)特例の適用はできません。別生計の次女が居住した場合も同様に取り扱われます。なお、生計一の親族が引っ越してきて家賃を支払わずに居住していた場合は、特例の適用があります。
父と生計一であった母が、父が老人ホーム入居後も引き続き居住のために自宅を使用しているので、 母が自宅敷地を相続する場合には、小規模宅地等(居住用)特例を適用できます。母は相続開始直前では父とは別生計になっていますが、父が老人ホームに入居する直前では、父と生計一でしたので特例として認められるのです。
自宅を建築途中でも、小規模宅地等(居住用)特例の適用を受けることができます。建替えやリフォーム工事中に、母が一時的に賃貸住宅に居住していた場合も同様です。
父の相続において、母が自宅敷地を取得したときは特例を適用できます。一方で、家なき子である長女または次女が自宅敷地を相続したときは特例を適用できません。家なき子は、被相続人に配偶者がいる場合や、被相続人が他の親族と同居しているときには、その敷地について小規模宅地等(居住用)特例を適用できないのです。
老人ホーム入居の際は、最新の制度内容の確認を
小規模宅地等(居住用)特例は、故人が亡くなった後に配偶者や生計一親族の生活基盤を守るための規定であり、その適用の可否は相続税の計算に大きな影響を与えます。近年は少子高齢化や核家族化が進む社会のニーズに合わせて、数年ごとに改正がされているのも特徴です。
ご家族が老人ホームに入居するときや、ご自身が入居を検討するときには、小規模宅地等(居住用)特例について最新の制度内容を確認しておくことも必要でしょう。
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