株価は「業績に先行する」といわれるが・・・
第一回目として、月次データを利用することになぜメリットがあるのか? ということについて解説します。
株価はよく、業績に先行するといわれます。確かに株価は、まるで業績を読むかのように業績より先に動いているふうに見えるケースが多いものです。しかし、株価は決して未来を予知しているわけではありません。売り買いしているのは人間ですから、日々の出てくる情報を織り込んでいるだけです。
しかも、常にその情報を正しく織り込んでいるわけではありません。株価は、単に表面化した現象と同時進行しているだけです。ところが、業績は終わってから発表までに時間がかかります。たとえば、3月決算の会社であれば、通期決算は4月末から5月半ばに発表されます。すると、第4四半期決算の最初の月、つまり1月に起こったことも、決算として発表されるのは、3、4カ月遅れになります。
一方、月次であれば、早い会社では1月の月次は2月初め、2月の月次は3月の初めに発表されます。この月次を見ておけば、かなり高い確率で、企業の次に出てくる四半期業績は予想がつくのです。だから、月次を発表する会社の場合、株式投資という観点からは、決算は残りかすのようなケースもあります。
しかし、日経新聞などの報道機関は、業績をことさら取り上げます。その結果、マーケットの参加者も月次は見ていなくても、業績は見ています。でも、その業績はもうほとんど株価に織り込まれていたりします。月次の後追いになるのですから当然でしょう。
ただし、ユニクロ=ファーストリテイリング(9983)のような注目度の高い会社の場合、月次データが公表されると新聞が記事にします。そして、好調であれば買われて、不調であれば売られるということもしばしば起こります。
月次が発表された時点では、その月次データが反映される業績はまだ発表されていないわけですから、結果的に業績より先に月次データで株価が動いてしまうこともあります。そのような会社の場合、月次データを見ていても、人より先に動くのは難しいかもしれません。
「月次データ」活用で運用成果がプロを上回ることも!?
みなさんは、業績は見ているけれど、月次を見ていないという会社がありませんか? そうであるとしたら、株が当たらないのが納得できることでしょう。でも、そんな人はあなただけではありません。まだまだ、たくさんの人がいるわけです。だから月次データを見ていれば、本当に株価が読みやすいというわけです。
私はプロのアナリストとして、30年間株式投資と関わってきました。私の頭の中では、当然月次データは株価に織り込まれているだろうという、思い込みがありました。ところが実際、月次データを注意深く見始めてみると、月次データで当然わかることも、株価は業績が発表されてからあわてて動くケースが頻繁に起こります。
実は、多くのプロも私同様月次を軽視している人が多いのです。実際に使ってみて、私自身が目からウロコでした。もちろん、月次データを発表しない会社では当然月次は使えませんし、月次を発表していても、業績との連動性が低い業種、低い会社もあります。
この連載では、どういった会社の月次が役に立つかも解説します。月次データを見ることはむしろ業績を見るより扱いやすいという面では、月次データのフォローは初心者向きとさえ言えます。それなのに運用成果では、プロを上回ることさえあるのですから、月次データを使った投資法を覚えない手はありません。
株式投資をやるならまずは、月次データのフォロー。これに尽きます。次回からは、具体的に月次データで典型的に儲かった例を示してお話ししたいと思います。