アマゾン薬局の登場により、街の薬局は消滅する!?
では、アマゾン薬局の登場によって街の薬局は消滅してしまうのでしょうか?
現在の薬局の状況をみると、そのようなことはないと思っています。風邪などの突発的な病気の際には街の薬局を利用するでしょうし、デジタルが苦手な高齢者の患者の方々も街の薬局を選ぶでしょう。ただし、街の薬局の数そのものは減ると予想しています。「アマゾン薬局」の利便性を凌駕するきめ細やかなサービス、「質」が担保できる薬局のみが生き残る可能性が高いです。
生き残るためには薬局のDXが不可欠
日本の調剤医療費は、年間約7.5兆円(2020年度)規模の巨大市場です。調剤薬局の数はコンビニよりも多く、実は6万店以上あります。アマゾンが日本の薬局業界がビジネスチャンスと捉えたのは、自然な流れといえるでしょう。
街の薬局は、「質」を高めることはもちろん、DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に進めるべきです。すでに、大手の調剤薬局チェーンでは、独自のオンライン販売システムを立ち上げるなどの改革を進めています。しかし、中小・個人経営の薬局では、オンライン化への対応が立ち遅れているのが現状です。大手の調剤薬局のシェアはトップ10社を合計しても約15%にすぎません。中小の薬局はDXに本格的に取り組まなければ、「アマゾン・エフェクト」に飲み込まれてしまうかもしれません。
アマゾン薬局以外にも、DXを押し進める法改正が2024年に行われる見通しになっています。それは、薬局における「調剤外部委託」の解禁です。現在、薬機法(『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』略称)によって、薬局内での調剤が定められています。しかし、調剤業務は手間とコストが見合わないと考える薬局が多く、「調剤外部委託」が解禁されることで、調剤業務はアウトソーシングし、服薬指導のみを行う薬局が増加することが予想されています。
「アマゾン薬局」が法改正を新たなビジネスと捉え、調剤業務にも乗り出す可能性もあります。それは新たな脅威となるはずです。改めて、DXが急務といえるでしょう。