国も推奨する「薬の飲み合わせトラブルを減らせる方法」が全然浸透しないワケ

国も推奨する「薬の飲み合わせトラブルを減らせる方法」が全然浸透しないワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

『かかりつけ薬剤師』という制度をご存じでしょうか。2016年4月の調剤報酬改定によって始まったこの制度は、患者自らが自分を担当する薬剤師を指名することで、指名を受けた薬剤師から特定のサービスを受けられるようになりました。しかしながら当制度は、普及が進んでいないのが実情です。メリットも多いはずなのに、なぜ普及しないのか。本記事では、かかりつけ薬剤師のメリットと課題について詳しく解説します。

薬局のありかたを「モノ(薬)からヒト(患者)へ」

「薬剤師」や「薬局」と聞いて、あなたはどんなサービスをイメージしますか? おそらく最初に思い浮かべるのは「薬そのもの」ではないでしょうか。各病院の近くにある薬局(門前薬局)へ出向き、薬剤師から薬の説明を聞き、薬を受け取る……そんな従来の薬局の姿が変わりつつあります。

 

2015年、厚生労働省は医薬分業(医師が処方し、薬剤師が調剤すること)の原点に立ち返り、薬局を患者本位の「かかりつけ薬局」とすることを目的に「患者のための薬局ビジョン」を策定しました。薬局のありかたを「モノ(薬)からヒト(患者)へ」という方向に変えていくことが示されています。

 

これにともない、薬剤師のサービスも変わります。薬を渡すだけのその場限りの存在ではなく、服薬中のフォローや体調変化の確認、そして薬の飲み忘れを防ぐ「かかりつけ薬剤師」としての役割が求められているのです。患者の健康により深く関わる重要な仕事です。

 

すでに「『かかりつけ薬剤師』という制度をご存じですか?」といった話を薬局で耳にしたことのある方もいらっしゃるはずです。ですが、普及が進んでいないのが実情です。本稿では、かかりつけ薬剤師のメリットと現状の課題をお伝えします。

かかりつけ薬剤師を利用する「患者側のメリット」

かかりつけ薬剤師の制度は、2016年4月の調剤報酬改定でかかりつけ薬剤師の評価が定められ、始まりました。この制度では、患者自らが、自分を担当する薬剤師を指名し、指名を受けた薬剤師は、次のようなサービスを提供します。

 

1.服薬情報の一元管理

「いつ、どの病院で、どんな薬を処方されたか」などの服薬情報を一元的・継続的に管理します。こうすることで「同じ薬が複数の病院から処方されている(重複投薬)」「よくない影響がある薬同士の飲み合わせ(相互作用)」といったトラブルを防げます。また、副作用の有無、期待される効果がきちんと出ているかなど、薬による影響も確認できます。

 

2.24時間対応と在宅医療への対応

土日や休日や深夜でも、緊急時には24時間対応でかかりつけ薬剤師が電話相談を受け付けます。そして、在宅医療を受けている患者に対して、在宅調剤や薬の管理を行います。

 

3.医療機関などとのチーム連携

副作用や服薬状況の情報共有や、健康相談など、患者に必要な医療や介護を提供できるよう医療機関などに働きかけます。

 

患者は、自分と向き合ってくれる薬剤師からのサポートを末永く受けることによって、より安心して薬を服用できますし、健康へのメリットが大きい制度です。

 

さらに、かかりつけ薬剤師が所属する薬局も「かかりつけ薬局」として、電子お薬手帳やオンライン資格確認といったICT(クラウド管理などの情報通信技術のこと)によって、患者の服薬情報へアクセスできるようになりました。

 

ちなみに、すべての薬剤師がかかりつけ薬剤師になれるわけではありません。3年以上の薬局勤務経験、同じ薬局での週32時間以上の勤務と12ヵ月以上の在籍、研修認定薬剤師の資格取得、そして医療に関する地域活動への参画など、いくつもの条件をクリアする必要があります。

 

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