しゃべり言葉が「文字化け」してる!
地球上にはない「言葉」を発するオットは、まるで宇宙人みたいだった。体のリハビリが進むにつれて起きている時間が長くなり、「のどが渇いた」だの「ベッドを上げてくれ」だの伝えようとするのだが、こちらには「skぎぇkで」とか「ぉえxdkれ」としか聞こえない。しゃべり言葉が「文字化け」しているようだった。
メールが文字化けしているとき、送った側は文字化けに気づいていないことが多い。オットも自分がオカシナ音を発していることに気づかなかった。元気になるにつれて、話す時間が長くなったけれど、何言ってんだかわからない。
言語聴覚士になった今だったら、このときのオットの言葉の症状は「ジャーゴンですね」と言うだろう。頭の中に伝えたい「言葉」はあるけれど、それがどういう「音」なのかを判断する機能が障害された状態だ。自己判断でコレと思った音を組み合わせるので、周りには通じない自分だけの「言葉」=ジャーゴンを発してしまう。
また、オットは聴力には問題がなく、自分の口から出た「言葉」が聞こえてはいる。けれど、それがどういう「音」なのかを確定する機能がこれまた障害されたため、自分が「宇宙語」を話していることにまったく気づいていなかった。
そんな状態で3週間、体の状態も安定し、リハビリのため回復期病院に転院することになった。