(※写真はイメージです/PIXTA)

間取りづくりは、暮らしのさまざまなシーンを想定しながら進められます。本稿では、本間至氏の著書『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)より、「『キッチン』は生活動線とセットで考える」を見ていきましょう。暮らしやすい間取りを作る住宅設計者として評価の高い筆者が、暮らしやすさの秘訣を伝授します。

 

<ポイント>

●調理や食事以外でも、キッチンの出番はかなり多い

●生活パターンとキッチンの関係性を整理しよう

「キッチン」は生活動線の要

家のなかでの行動を思い返してみると、調理や食事以外でも、実はさまざまな行動がキッチンと関係していることが多いのに気がつきます。

 

たとえば、仕事帰りに買い物をして帰宅したとき。服を着替える前に、まずは買ってきた食材をキッチンに置きたい。キッチンが1階にあるならなおさらです。キッチンが2階でも、階段の近くにキッチンがあれば食材をすぐにしまえます。

 

もし、朝の出勤前や家事の合間に洗濯をするなら、キッチンの近くに洗濯機置き場があると便利です。その周辺をパントリーにして、食品類やキッチン周辺の雑多なモノをしまうスペースにしてもいいでしょう。さらに、パントリーをほかのスペースとつなげれば、家のなかに回遊動線が生まれて行き来しやすくなります。こう考えていくと、キッチンは生活動線の要といえるでしょう。

 

近年はキッチンをオープンにしてリビングやダイニングとつなげる間取りが多いようですが、キッチンをオープンにするか、独立したクローズドタイプにするか、どちらを選ぶべきかは住まい手の好みによります。大切なのは、キッチンがどれだけ使いやすい場所となるかということです。住まい手の生活パターンとキッチンの関係性を考えることが、最適な間取りを生み出す第一歩となります。

来客時も安心なキッチンへの直通動線

間取りづくりは、暮らしのさまざまなシーンを想定しながら進められます。どこに優先度を置くかは人によって違いますが、変わらないシーンもある程度あります。

 

たとえば、買い物から帰って、玄関からキッチンへ直行するという行為。この行為は日常生活でほぼ毎日繰り返し行われるだけに、玄関からキッチンまでの動線は優先順位が高いといえます。

 

たとえば、その動線の途中に収納スペースを設けると、そこは玄関側からはシュークローク(玄関収納)になり、キッチン側からはパントリーになります。こうすると、ひとつの収納が二役を演じることになり、かつ、玄関とキッチンのふたつのスペースをつなげるもうひとつの動線、あるいは裏動線にもなります。もちろん、収納に限らず、それ以外のスペースで裏動線をつくることもできます。

 

※図表内の「→」は動線を表す。 出所:本間至著『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)
[図表1]ふたつの裏道 ※図表内の「→」は動線を表す。
出所:本間至著『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)

 

※図表内の「→」は動線を表す。 出所:本間至著『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)
[図表2]収納を経由して身軽にキッチンへ ※図表内の「→」は動線を表す。
出所:本間至著『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)

キッチンは家事動線に、家事動線は回遊に

キッチンでの仕事がほかの家事とどのように関係するかは、生活のしかたによって違ってくるものです。たとえば洗濯機について考えてみると、置き場は大きく分けて2通りあります。ひとつは洗面脱衣室、もうひとつはキッチンと近接した場所です。

 

洗面脱衣室に置く場合は、脱衣場所と洗濯物との関係のみで場所を決められますが、洗濯物を干す行為はそれなりに時間がかかるものですので、朝の忙しい時間帯にはキッチンの近くにあったほうが便利です。さらに、洗濯機置き場周辺に家事コーナーがあれば、雑務をこのスペースで集約して行うことができます。

 

このように、家事がいくつも集まってくると、「家事動線」をぐるぐると回遊させたくなります。家事動線に行き止まりがあると、同じ場所を往復することになり、余計に時間がかかってしまいます。

 

※図表内の「→」は動線を表す。 出所:本間至著『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)
[図表3]選択肢が広がる1本の家事動線 ※図表内の「→」は動線を表す。
出所:本間至著『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)

 

【⇒画像一覧:家事が完結する回遊動線 etc.】

キッチンもサニタリーもまとめてひとつの動線に

キッチンとサニタリー(洗面脱衣室、浴室、トイレ)が同一階につくられている場合、できることならこのふたつのスペースは近接していたほうが、暮らしが何かと便利になります。片付け、掃除、洗濯といった水廻りの家事を集約して済ませることができるからです。たとえば、キッチンとサニタリーを隣どうしに並べて引戸の開け閉めで行き来できるようにすれば、キッチンとサニタリーは連続して通過できる動線となります。また、回遊動線の一部にこの動線を組み込めば、家事のための裏動線として活用できます。

 

また、キッチンと洗面脱衣室の間にユーティリティ(水廻りの作業スペース)やパントリーを配置すると、家事での使い勝手ははるかに向上します。

 

※図表内の「→」は動線を表す。 出所:本間至著『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)
[図表4]水廻りスペースを集約 ※図表内の「→」は動線を表す。
出所:本間至著『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)

 

 

 

本間 至

一級建築士

 

1956年東京生まれ。一級建築士。1979年日本大学理工学部建築学科卒業。卒業後、1986年まで林寛治設計事務所で実務を通し住宅設計を学ぶ。独立後、東京で設計事務所本間至/ブライシュティフト(一級建築士事務所)を設立し、今までに150軒以上の住宅の設計を手掛け、暮らしやすい間取りをつくる住宅設計者として高い評価を得ている。

主な著書に、『最高の住宅をデザインする方法』『最高に楽しい[間取り]の図鑑』『本間至のデザインノート』『いつまでも快適に暮らす住まいのセオリー101』『小さな家の間取り解剖図鑑』(すべてエクスナレッジ刊)などがある。

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    ※本連載は、本間至氏の著書『間取りの解剖図鑑』(エクスナレッジ)より一部を抜粋・再編集したものです。

    間取りの解剖図鑑

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    本間 至

    エクスナレッジ

    なぜ、この家の間取りが「住みやすい」のか? 「動線」をキーワードに間取りを紐解けば、心地よさのワケと理想の住まいが見えてくる! 間取りをかたちづくる「生活動線」や「家事動線」「洗濯動線」「回遊動線」などの「…

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