「相続人の範囲」を学ぶ前に知っておくべきこと
相続には、亡くなった被相続人との関係として、結婚・離婚のほか、被相続人の実子かどうかといった点が影響します。相続人の範囲を理解するための前提として整理しておきましょう。
◆結婚と離婚・子どもの定義
◆結婚・離婚とは?
結婚は、18歳以上の男女が、夫婦が使う「姓」を役所に届出ることによって成立します。
一方、離婚は夫婦の話し合いによって決めます。話し合いがまとまらない場合は、裁判所に決めてもらうことになります。
◆子どもとは?
子どもには、「実子」と「養子」があり、実子には「嫡出子」と「非嫡出子」があります。
妻が結婚中に妊娠してできた子は、夫の実子だと推定されます。その子を「嫡出子」といいます。これに対して、結婚していない男女の間で産まれた子どもは「非嫡出子」といいます。この場合、非嫡出子は、男性が認知することによって実子となります。
◆相続人の範囲…①故人の親族
被相続人と一定の親族関係にあった人のみが、相続人になることができます。
親族というのは、6親等内の血族、配偶者、および3親等内の姻族をいいます。
「血族」とは、親子や兄弟姉妹のように血のつながりがある人のことをいいます。養子も血族です。「配偶者」とは、婚姻の相手方のこと、つまり夫や妻のことです。「姻族」とは、配偶者の血族や、血族の配偶者のことをいいます。言い換えると、夫や妻の血族、血族の夫や妻です。
ちなみに、配偶者が死亡した場合、亡くなった配偶者の血族と、残された妻もしくは夫との「姻族関係」は、自動的には終了しません。姻族関係は、残された配偶者が自ら終了させない限り、継続することになります。
◆相続人の範囲…②遺言に記名された人
遺言などによって財産を承継する人が決まっている場合は、その遺言書に名前を書かれた人が財産を承継します。
遺言がない場合は、民法によって定められた相続人の間において、誰がどのように財産を相続するのか、話し合いで決めることになります。
◆相続人の範囲…③法定相続人
それ以外の場合、民法によって相続人が決まっています。
これを法定相続人といいます。法定相続人は、被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹、そして配偶者です。
◆相続人としての権利を失う「相続欠格」「相続廃除」とは
「相続欠格」とは、特定の相続人に相続権を失わせる制度です。相続欠格となるのは、被相続人を殺害しようとして逮捕される、あるいは、遺言書を無理やり書かせる・遺言書を破棄するなどの行為を行ったケースです。
「相続廃除」とは、被相続人を生前に虐待したなどの理由で、相続人の立場をはく奪するものです。被相続人が生前に家庭裁判所に申し立ててるケース、あるいは、遺言書を活用するケースもあります。
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相続の順位について
法定相続人の間では、相続する順位が定められています。
まず、配偶者は常に相続人になります。ただし、戸籍上の婚姻関係がある正式な配偶者に限りますので、内縁関係にある人は相続人となることはできません。
配偶者以外の法定相続人には、下記のように順位が定められています。
第一順位:子ども
第二順位:父母
第三順位:兄弟姉妹
たとえば、被相続人に子がいれば、配偶者と子が相続人になります。嫡出子、非嫡出子、養子の間には順位はありません。母親の胎内にいる胎児も相続人となります。
子どもが相続人となるのであれば、父母や兄弟姉妹がいても、彼らは相続人になりません。
被相続人の子がすでに亡くなっている場合は、被相続人の孫が相続人となります。
被相続人に子がいなければ、配偶者と父母が相続人になります。
もし父母がすでに亡くなっていれば、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。
被相続人の兄弟姉妹がすでに亡くなっていれば、兄弟姉妹の子、つまり甥姪が相続人となります。
ただし、法定相続人でも、上述した相続欠格となる場合や廃除になる場合には相続することができません。
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【法定相続人】民法での相続人は誰?子ども・親・兄弟の順位をわかりやすく解説【FP3級】
【代襲相続人】相続の権利が子に継承される
相続人となるべき人が、被相続人よりも先に死亡していた場合、相続欠格や廃除になる場合において、相続人となるべき人に子がいるときは、その子がかわって相続人になることができます。これを「代襲相続」といいます。
たとえば、第一順位の子や、第三順位の兄弟姉妹がすでに死亡していたような場合です。子どもの代襲相続では、孫が相続人となります。兄弟姉妹の代襲相続では、甥姪が相続人となります。これらの相続人を「代襲相続人」といいます。
なお、相続人が相続放棄をした場合は、その人は、はじめから相続人ではなかったものとみなされるため、代襲相続は発生しません。
【相続の承認と放棄】負の遺産を破棄する(期限付き)
相続人が受け継ぐ財産は、現預金、土地や建物のような価値がある資産や権利だけでなく、借金などの債務や義務も含まれます。
一般的な相続では、資産のほうが債務よりも大きいことでしょう。この場合、相続人は、資産と債務を無制限に受け継ぐことになります。これを単純承認といいます。
しかし、資産よりも債務のほうが大きいケースもあります。その場合、相続人は、相続することで自分が不利益を被ることになります。そこで、相続人は、相続そのものを放棄するか、債務に関して限定承認することができます。
◆相続放棄と限定承認について
「相続放棄」とは、被相続人の資産や債務をいっさい相続しないことです。
相続放棄すると、被相続人の借金は承継しなくてもよいことになります。しかし、資産までもいっさい承継することができなくなります。
相続人が相続放棄しようとする場合は、相続開始日から3ヵ月以内に、家庭裁判所で手続きしなければいけません。
「限定承認」とは、相続によって承継した資産の範囲内で、債務を承継することです。
たとえば、被相続人に借金などの債務があるが、その債務の返済の財源となる資産がどれくらいあるかわからない場合、返済すべき債務の金額を資産の金額を上限とするために、限定承認を選択することができます。
◆相続放棄する場合の期限について
相続人が限定承認しようとする場合は、相続開始日から3ヵ月以内に、家庭裁判所で手続きしなければいけません。
相続人は、相続開始日から3ヵ月以内に、普通に単純承認するか、限定承認するか、相続放棄するかの、いずれかを選択しなければなりません。
もし3ヵ月以内に限定承認または相続放棄しなければ、単純承認したものとみなされます。
また、相続人が勝手に土地を売却するなど、資産を処分してしまった場合にも単純承認したものとみなされます。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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