「小規模宅地等の特例」ってどんなもの?
「小規模宅地等の特例」すなわち、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例とは、被相続人や親族が住んでいたり、事業に使っていたりしていた土地の評価額から、一定の限度面積まで、評価額に一定割合を乗じた金額を減額する制度です。
この特例が適用される土地は「特定居住用宅地」「特定事業用宅地」「特定同族会社事業用宅地」「貸付事業用宅地」の4つに区分されます。
ちなみに、小規模宅地等の「等」とは、借地権を意味します。すなわち、土地と借地権のいずれであっても、特例を適用することができます。
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①特定居住用宅地の場合
「特定居住用宅地」とは、相続開始前に、被相続人や親族が住んでいた土地で、被相続人の親族が取得したものをいいます。
特定居住用宅地として特例を適用するための要件ですが、配偶者が取得した場合には、何も要件はありません。必ず適用することができます。
しかし、被相続人と同居していた親族が取得した場合には、相続税の申告期限までその家屋に住み続け、土地を所有し続けることが要件となります。
◆家なき子が特例を適用する3つの条件
配偶者や同居していた親族がいないケースであれば、家を持っていない親族が取得した場合にのみ、この特例を適用することができます。
このような親族のことを「家なき子」と呼ばれています。「家なき子」が土地を取得して、特例を適用するための要件は、いくつかあります。
①過去3年間、自分や配偶者または3親等内の親族が所有していた家屋に住んだことがないこと
②相続開始時に、自分が住んでいた家屋を過去に自分で所有していたことがないこと
③相続税の申告期限までその土地を所有し続けること
特定居住用宅地の減額の適用対象となる限度面積は330㎡、減額割合は80%です。
②特定事業用宅地の場合
特定事業用宅地とは、相続開始前に、被相続人や親族が事業をおこなうために使用していた土地で、被相続人の親族が取得したものをいいます。
事業をおこなうといっても、土地を賃貸する事業の場合は、貸付事業用宅地という別区分の特例となるため、特定事業用宅地という区分には該当しません。
また、相続開始前3年以内に事業が開始された場合も、特定事業用宅地には該当せず、特例は適用できないものとされています。
特定事業用宅地として特例を適用するための要件は、相続税の申告期限まで土地を所有し続け、事業を継続していることです。
特定事業用宅地の減額の適用対象となる限度面積は400㎡、減額割合は80%です。
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特定同族会社事業用宅地の場合
特定同族会社事業用宅地とは、相続開始前に、親族が支配している法人が事業をおこなうために使用していた土地で、被相続人の親族が取得したものをいいます。
ここで親族が支配している法人とは、被相続人と親族が、発行済株式総数または出資総額の50%超を所有している法人をいいます。
特定同族会社事業用宅地として特例の適用をするための要件は、土地を取得した親族が、相続税の申告期限まで土地を所有し続け、事業を継続していること、そして、その法人の役員として働いていることです。
特定同族会社事業用宅地等の減額の適用対象となる限度面積は400㎡、減額割合は80%です。
貸付事業用宅地の場合
貸付事業用宅地とは、相続開始前に、被相続人やその親族が不動産賃貸事業するために使用していた土地で、被相続人の親族が取得したものをいいます。
相続開始前3年以内に貸付事業が開始された場合は、貸付事業用宅地には該当せず、特例は適用できないものとされています。
貸付事業用宅地に特例を適用するための要件は、相続税の申告期限まで土地を保有し続け、不動産賃貸事業を継続することです。
貸付事業用宅地の減額の適用対象となる限度面積は200㎡、減額割合は50%です。
その他、共通の「適用要件」とは?
小規模宅地等の特例を適用するには、相続税申告書を提出することが要件となります。
特例を適用した結果、課税価格が基礎控除額を下回ることとなり、相続税がゼロとなる場合でも、相続税の申告書を提出しなければいけません。
また、この特例の適用をうけるためには、相続税の申告期限までに、土地の遺産分割が確定していなければなりません。
遺産分割を確定できない場合、申告期限後3年以内に遺産分割がおこなわれたならば、適用を受けることができます。
複数の土地が適用対象となるケースの対策
適用対象となる土地が複数ある場合、4つの区分のうち、どの特例の適用を選択するべきか、問題となることがあります。
選択のやり方によって、課税価格が減額される大きさが異なるからです。
当然ですが、大きく減額されるほうが、税負担が軽くなるので有利です。
適用可能な土地が、特定居住用宅地と、特定事業用宅地である場合、限度面積は特定居住用宅地が330㎡まで、特定事業用宅地が400㎡までとなりますが、2つの区分を完全併用することができます。
すなわち、限度面積は、合計した730㎡まで拡大します。
これに対して、いずれかに貸付事業用宅地を選択する場合には、一定の調整計算が必要となり、完全併用することはできません。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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