(※写真はイメージです/PIXTA)

「成年後見人制度」は、認知症などによって判断能力が低下した人の財産管理や生活に必要な契約を代理人が行うことで、円滑に進めるための制度だ。しばしば問題点が指摘されるこの制度だが、相続に大きな影響を与える「成年後見人制度のリアル」について、行政書士であり静岡県家族信託協会代表を務める石川秀樹氏のブログより、具体的な例を交えて解説された箇所を抜粋して紹介する。

定期預金の解約も「自由」ではない

あなたが任意後見人になっても、問題解決にはなりません。例えば「500万円の定期預金の解約」を考えてみましょう。

 

任意後見監督人に何も相談しないで解約できると思いますか? はじめに「母が介護施設に入所するための保証金に充てる」と説明しておけば、監督人のOKは出るかもしれません。

 

しかし「今後の出費に備えて、定期預金はすべて解約する」という理由なら、監督人は難色を示すでしょう。定期預金を普通預金に換えれば、明らかに使い勝手がよくなります。それは「お金が流出しやすくなること」と、監督人は考えるでしょう。

 

任意後見監督人がこの問題を家庭裁判所の事務官に相談すれば、同様の答えが返ってくるでしょう。

 

流石に、月々の生活費の内容にまで監督人がいちいち干渉することはないとは思います。しかし「熱中症対策に部屋にエアコンを買う」などという費用についてだと、任意後見監督人は口をはさみます。日常の費用以外の“(おおむね10万円単位の)大きなお金”については、「私に一旦相談してください」と言うでしょう。

お母さんの施設入所にも口出し

お母さんがいよいよ施設に入るときも、簡単ではないかもしれません。苦労してためたお金を“湯水”のように使わないように、と監督人が干渉する可能性があります。

 

母が管理していればそうしたであろう“当たり前”のことが、他人の口出しを受けるのです。それは監督人の「正義感」かもしれませんが、家族の感覚とはだいぶ違うかもしれません。

 

任意後見も、法定後見と同様に「本人のお金だけを守る制度」と化しています。

 

失礼なたとえですが、私はこの状況について、江戸時代の奉行制度をつい連想してしまいます。奉行→与力→目明し→その子分……。“権力”が下にいくほど庶民の一挙手一投足に口を出したがる。もちろん「名奉行やヒーロー目明しが、現代では皆無」、とまでは言いませんが。

次ページ強烈に誘導しようとしてくる家庭裁判所…

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