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<ポイント>
●家のなかの移動=「動線」は住みやすさに直結する
●「行き止まり」と行き止まりのない「回遊」を使い分けよう
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暮らしやすさのカギは、ぐるぐるつながる「回遊動線」
家のなかでは、各スペース間での移動が頻繁に行われます。その動きを「生活動線」と考えたとき、リビング(L)、ダイニング(D)、キッチン(K)を中心とした生活動線の良し悪しが、暮らしに影響を与えます。間取りを考えることは、生活動線を考えて各スペースをつなげていく作業だともいえます。
プライバシーを必要とするスペースは、原則、その部屋で行き止まりにします。しかし、プライバシーを必要としないスペースは、行き止まりにしなくても構いません。そこでひとつの選択肢として考えられるのが、「回遊できる動線」をもった間取りです。LDKが回遊動線に組み込まれることで、暮らしの流れがスムーズになることが多いのです。
LDKに留まらず、洗面脱衣室やパントリーなどのスペースも回遊動線に巻き込めば、動線が多様化されます。合理的に多様化されるだけではなく、生活に楽しさを与えることもあります。たとえば犬や猫を飼っている場合、思いもしない場所からひょっこりとペットが現れることもありますし、追いかけっこをする楽しみも生まれます。
ただし、動線が常時つながっていると不便をきたす場合もあります。こういった場合は、その間を引戸などで仕切れるようにしてもよいでしょう。
回遊動線はLDKと絡めるのが基本
回遊動線は、廊下や玄関ホールなどを基点として、LDKを回遊のなかに組み込むのが基本的なかたちです。その際、基点となる場所からリビングに入るか、またはキッチンに進むか、基本的にはふたつの選択肢から選ぶことになります(図表1)。ほとんどの場合、ダイニングはキッチンとリビングの間に挟まれるためです。
回遊動線は、この基本形をもとにしてほかの回遊動線とうまく絡めていくことで、使い勝手がさらに向上していきます。また、生活に必要な動線はさまざまあり、LDKの動線とはまったく絡まない動線ももちろんあります。回遊動線にこだわることが必ずしもよいわけではありませんが、まずはLDKを回遊する基本形を思い描きながら、いろいろなかたちに変化させてみるのがよいでしょう。
スムーズな動線の先に暮らしやすさがある
LDKを絡めた回遊動線に別の回遊動線を組み合わせてみると、家のなかはさらに使い勝手がよくなります。この組み合わせは部屋の数だけたくさんあり、収納室との回遊や、パントリーとの回遊、そして玄関収納やサニタリーなど、日常の暮らしからいくつものパターンをつくり出すことができます(図表3)。
日々繰り返される家のなかでの日常生活。生活は繰り返し作業でもあり、それはさまざまな動きの連続ともいえます。その動きがスムーズであればあるほど、暮らしやすくなるのは必定のこと。まずは、各スペース間の基本的な動線を考えてみてください。それらの基本動作が交錯するようなことがあれば、その動線の一部を重ね合わせることで、ふたつの回遊動線ができるかもしれません。このように、よりスムーズな動線を考えていくと、自然と暮らしやすい家へ近づいていきます。
本間 至
一級建築士
1956年東京生まれ。一級建築士。1979年日本大学理工学部建築学科卒業。卒業後、1986年まで林寛治設計事務所で実務を通し住宅設計を学ぶ。独立後、東京で設計事務所本間至/ブライシュティフト(一級建築士事務所)を設立し、今までに150軒以上の住宅の設計を手掛け、暮らしやすい間取りをつくる住宅設計者として高い評価を得ている。
主な著書に、『最高の住宅をデザインする方法』『最高に楽しい[間取り]の図鑑』『本間至のデザインノート』『いつまでも快適に暮らす住まいのセオリー101』『小さな家の間取り解剖図鑑』(すべてエクスナレッジ刊)などがある。