繰り下げ待機中の夫が68歳で死亡、年金はどうなるの⁉
◆遺族が未支給年金の形で受給できる
もしも年金の繰り下げ待機期間中に亡くなった場合、年金受給者本人は、年金を1円も受け取ることができません。ただし、65歳から亡くなった月までの年金については、「未支給年金」として遺族が受け取ることができます。受給できる年金は、繰り下げ増額は反映せず、「本人の65歳時点での受給額×経過期間分」となります。
未支給年金を受給できる遺族の要件は、年金受給者と生計を同じくしていた人(別居を含む)です。受給できる遺族が、死亡届等必要な書類とともに、未支給年金請求の届け出をすることで、受給できます。
◆未支給年金は相続税の対象ではない
図表1は、夫が68歳で亡くなった場合、妻が未支給年金をいくら受け取れるのかを示したものです。このケースでは、妻は、65~68歳までの3年分の未支給年金を受け取ることができます。受給総額は、夫の65歳時点の年金額175万2,000円の3年分に相当する525万6,000円となります。
《繰り下げ待機中の夫が68歳で死亡したら、夫の年金はどうなる?》
繰り下げ待機中に夫が68歳で亡くなると、65~68歳までの3年分を未支給年金として妻が受け取れますが、繰り下げによる増額分は反映されません。また雑所得として税金がかかります。
この場合の未支給年金は、相続税の課税対象とはなりません。ただし、受給する遺族の雑所得として、所得税や住民税がかかることになります。
また、支給要件を満たしている場合には、未支給年金のほかに遺族厚生年金として夫の老齢厚生年金の4分の3などを、一生涯受給することができます。
◆年金受給中の死亡でも未支給年金は発生する
年金を受給中に亡くなった場合でも未支給年金があります。理由は、年金は2カ月単位で支給され、1日でも月をまたげばその月の支給が発生するためです。実際は、2カ月分を翌月の15日に支給する後払い方式のため、最後の期間分は、死亡した本人は受け取れません。たとえば、4月20日に死亡した場合、6月15日に支払われる年金が未支給年金となります。
年金の支給は、2カ月分を翌月の15日に支払う後払い方式のため、死亡月までの年金を本人が受け取ることはできません。本人が受け取れなかった年金は、遺族が受け取れます。
年金を受給していた夫が、4月20日に死亡した場合、4月分の年金を妻が受け取れる
本来年金額175万2,000円(月額14万6,000円)
日本実業出版社・編
酒井富士子(回遊舎)・執筆
小泉正典・監修