繰り下げ中に病気…今までの年金、まとめてもらえる?
◆繰り下げをやめるには2つの方法がある
年金の受給は、65歳を過ぎれば、いつでも開始することができます。そのため、繰り下げをするつもりで年金の請求をしていなくても、好きなタイミングで繰り下げを取りやめて、受給開始ができます。
受給開始には、2つの方法があり、1つ目は、繰り下げ待機中に受給したいと思った時に「繰り下げ申請」をし、そこから年金受給をする方法。たとえ70歳まで繰り下げようと思っていたものを68歳から受給したとしても、申請時点での繰り下げ率で一生涯受給できます。図表1の方法①の例では、68歳時点で繰り下げすることになるため、増額した年金219万3,504円を一生涯受給していくことになります。
◆待機期間をさかのぼり一括で受け取ることも
2つ目の方法は、繰り下げ受給を選択せずに、繰り下げ待機をやめた時点から本来受給開始の65歳までさかのぼり、その期間の年金を一括受給する方法です。一括で受け取る場合は、本来受給額となるため、繰り下げによる増額はありません。図表2の方法②の例では、65歳までさかのぼって、待機期間3年分の本来受給額の合計525万6,000円を一括で受け取ることになります。
《繰り下げ待機中の68歳の夫が、突然病気になり繰り下げをやめたくなったら?》
繰り下げを取りやめるには、やめる時点から繰り下げ請求して増額した年金を一生涯受け取るか、取りやめた時点から、65歳までさかのぼり、その期間分の本来受給額の年金を一括で受給するか、2つの方法があります。
◆年金の一括受給は「5年の時効」に注意
一括で年金を受給する場合、注意すべき点があります。
それは年金の時効問題です。年金は受給資格が発生してから5年経過すると、それ以前の年金は時効で消滅するルールです。
たとえば、72歳の時点で、繰り下げ受給せずに一括請求すると65~67歳の2年間の受給分については、時効により受け取れなくなります。
★Check!★ 2023年4月から5年時効のルールが一部改正に!
年金の一括受給を選択すると、5年より前の年金が時効により消滅します。2023年4月から「70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰り下げ制度」の新設で、この消滅分が救済されます。
たとえば図表3のように、72歳時点で一括受給すると、現行では、2年間の年金が消滅。そして、増額なしの5年分を一括で受け取り、以降の年金も増額はありません。改正後は、5年前の67歳時点で繰り下げ請求があったとみなされ、16.8%増額した年金を一括で受け取れ、以降も増額した年金を受給できます。
つまり、増額した分で消滅してしまう分を補てんできることになります。
日本実業出版社・編
酒井富士子(回遊舎)・執筆
小泉正典・監修