ファンドの税負担が増えれば投資家へのリターンも減る
⑤税務・会計に起因するリスク
不動産を運用していく中では、売買時には譲渡所得税や登録免許税が、保有時には固定資産税が課されるなど、税法にしたがって様々な税金が課されることになります。
また、納めるべき税金の額は、不動産取引を巡る会計の処理の仕方などによっても変わってきます。つまりは、税法はもちろん会計関連の法規の改正やさらには税務当局の意向など、税務・会計にかかわる様々な要因が、不動産ファンドの税負担のあり方に大きく影響してくるわけです。
税金の負担が増えれば、投資家に分配できるリターンは減少することになります。税務・会計に起因するリスクは他に比べると意識しづらいところですが、投資家の利害に大きくかかわるものであることは明らかです。
法改正により新たなコストが生じる事態もあり得る
⑥法律に起因するリスク
また、税法や会計法以外の法律に起因して、ファンドの運営にリスクがもたらされることもあります。
たとえば、前述した「構造計算書偽造事件」が起こった後、建築基準法の改正が行われ、建築確認や工事検査が厳格に運用されることになりました。ところが、チェックを厳しくしたのはよいものの、そのために必要な人員が十分に用意されていなかったために建築確認が滞る状況を招き、不動産市況にも悪影響が生じてしまったのです。
また、先に触れた平成18年の金商法制定も、法律に起因するリスクが顕在化した例といえるでしょう。
金融商品取引業の登録を行い、それを維持していく上では、少なからぬ費用を要しますし、事務作業も必要となります。金商法の改正以前には、そうしたコストや事務の負担が存在しなかったことを考えれば、金商法の制定がファンドのパフォーマンスにマイナスの効果をもたらした部分があることは否定できないでしょう。