2022年4~11月の自社株買い動向…当期利益増減と株価の関係

2022年4~11月の自社株買い動向…当期利益増減と株価の関係
(写真はイメージです/PIXTA)

2022年10~11月に決算発表と同時に自社株買いの設定を発表した企業の株価を確認したところ、概ね株式市場は自社株買いを好感しているようです。また足元の業績動向も加味すると、業績が堅調な企業の株価が特に大きく上昇していました。ただ、業績が振るわない企業についても意外と底堅く推移していたとニッセイ基礎研究所 森下千鶴氏はいいます。なぜなのか、その理由をみていきましょう。

自社株買い×当期利益減少企業の株価が底堅かった理由は?

このように足元の業績が振るわなくても自社株買いが設定された企業の株価が底堅かった要因は、主に以下の2つが考えられる。

 

一つ目は、決算発表前の9月に株価が大幅に下落した点である。9月は米国の金融引締め姿勢、英国を中心とした金融市場の不安定感の高まりや世界的な景気減速懸念が広まったことから、日本株も大幅に下落し、TOPIXは1カ月で▲6.5%下落した。そのため10月以降に株価が反発する中で自社株買いを設定した企業は「アナウンスメント効果」によって割安感が株式市場で特に意識された可能性がある。

 

二つ目は、日本株市場における需給面での自社株買いの設定の影響の大きさである。図表4は投資部門別売買動向(現物と先物の合計)を2015年1月から月次で累積した結果である。

 

【図表4】事業法人の自社株買いが需給面で存在感を高める
【図表4】事業法人の自社株買いが需給面で存在感を高める

 

赤色の線が事業法人の売買動向であり、自社株買いの実施が反映されている。他の主体別の累積売買動向がほぼ横ばいもしくは売り越しに対して、事業法人は基本的に買い越しが続いている。特に2021年6月以降は17カ月連続で買い越しており、日本株の主要な買い手として日本株市場で存在感を増している。そのため、今後の自社株買い実施に伴う需給面のプラスが安心材料となって売られにくかったと思われる。

 

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年12月5日に公開したレポートを転載したものです。

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