(写真はイメージです/PIXTA)

総務省が公表する最新の『労働力調査』から、最新雇用環境の動向について、ニッセイ基礎研究所 斎藤太郎氏が考察していきます。

1.失業率は前月から横ばいの2.6%

【図表1】完全失業率と就業者の推移
【図表1】完全失業率と就業者の推移

 

完全失業率と就業者の推移総務省が11月29日に公表した労働力調査によると、22年10月の完全失業率は前月から横ばいの2.6%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想は2.6%)となった(図表1)

 

労働力人口が前月から▲13万人の減少となる中、就業者が前月から▲7万人の減少となったため、失業者は前月から▲5万人減の178万人(いずれも季節調整値)となった(図表2、図表3)

 

【図表2/3】産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
【図表2/3】産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数

 

就業者数は前年差50万人増(9月:同40万人増)と3ヵ月連続で増加した。産業別には、卸売・小売業は前年差▲7万人減(9月:同▲22万人減)と減少が続いたが、対面型サービス消費の持ち直しを反映し、宿泊・飲食サービス業が前年差22万人増(9月:同21万人増)と4ヵ月連続、生活関連サービス・娯楽業が前年差6万人(9月:同2万人増)と2ヵ月連続で増加したほか、製造業が前年差9万人増(9月:同19万人増)と2ヵ月連続で増加した。

 

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ51万人増(9月:同41万人増)と8ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差17万人増(9月:同▲22万人減)と5ヵ月ぶりの増加、非正規の職員・従業員数が前年差34万人増(9月:同63万人増)と9ヵ月連続で増加した。ただし、コロナ前の19年10月と比べると、正規の職員・従業員が68万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲86万人減となっている。

2.宿泊・飲食サービス業の新規求人数が大幅増加

厚生労働省が11月29日に公表した一般職業紹介状況によると、22年10月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.35倍(QUICK集計・事前予想:1.35倍、当社予想も1.35倍)と、10ヵ月連続で上昇した。有効求人数は前月比▲0.1%と小幅ながら7ヵ月ぶりに減少したが、有効求職者数が前月比▲0.8%とそれを上回る減少となったため、有効求人倍率は改善した。

 

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.06ポイント上昇の2.33倍と3ヵ月ぶりに上昇した。

 

新規求人数は前年比7.9%(9月:同9.8%)と19ヵ月連続で増加した。産業別には、卸売・小売業が前年比11.7%(9月:同12.7%)と6ヵ月連続で前年比二桁の高い伸びとなったほか、水際対策の緩和や全国旅行支援の開始を背景に、宿泊・飲食サービス業が前年比29.3%の大幅増加となった(図表4、図表5)

 

【図表4/5】有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
【図表4/5】有効求人倍率の推移/産業別新規求人数

 

失業率は横ばい圏で推移しているが、労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は、国内需要の底堅さや企業の人手不足感の高さを背景に改善が続いている。

 

特に、コロナ禍の影響を強く受けた飲食・宿泊サービス業は、このところ新規求人数、就業者数ともに大幅に増加しているが、水際対策の緩和や全国旅行支援の開始を受けて、先行きはさらなる改善が見込まれる。雇用調整助成金の特例措置は10月に上限が引き下げられ、12月以降は通常制度に戻る(一定の経過措置あり)こととなっているが、このことが失業者の増加につながるリスクは低いだろう。

 

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年11月29日に公開したレポートを転載したものです。

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