③雇用調整助成金の勘定科目を変更する
新型コロナウイルス感染症などの影響を受け、雇用の維持を図るために社員へ支給した休業手当や賃金の一部を国が助成する「雇用調整助成金」を受け取った会社は多いでしょう。
決算の際、これをどの勘定科目に入れるかによって決算書の数字が変わり、融資にあたって有利になります。
多くの会社は国から支給された雇用調整助成金を「雑収入」の科目に入れていると思います。しかし、雇用調整助成金によって休業手当や賃金の一部を受け取り、支払うべき人件費を減らすことができたわけですから、最初から人件費の金額から差し引く計上方法も理に適うと言えます。これも実例で見てみましょう(図表4)。
この時、営業利益(本業で得られた利益)はマイナスになりました。この営業利益を売上高で割った数値である「営業利益率」は、会社を評価する経営指標の一つであり、当然、銀行員は融資にあたっての判断材料にします。
実は雇用調整助成金の勘定科目を変更することで、営業利益赤字からの脱却ができる場合があるのです。
そこで今度は、雇用調整助成金をあらかじめ人件費から差し引いた計算書にしてみましょう(図表5)。
営業利益がプラスになると、銀行員からの評価アップにつながります。これはあまり知られていない情報だと思いますから、役立てていただければと思います。
菊地 宏
インフォニック株式会社 代表取締役社長
1964年、宮城県石巻市生まれ。同志社大学法学部卒後、現みずほ銀行に入行。大阪支店(外国為替部)を皮切りに、麹町支店等、15年半勤務。退社後、2005年インフォニック株式会社を創立、代表取締役に就任。現在グループ5社、計6拠点(京都、東京、大阪、福島、舞鶴、ミャンマー)でソフトウェア開発及びIT基盤構築業務を行っている。