前回は、不動産の価値を下げる「共有状態」を解消する方法を説明しました。今回は、財産の棚卸で不可欠な「保証債務」のチェックについて見ていきます。

保証人になっていれば当然借金を肩代わりするリスクも

他にも棚卸で見落としたくないものとして、保証債務があります。連載第2回の図表、「その他負の財産」というのがそれに該当します。つまり、あなたが保証人になっている場合はそれも考慮しましょうということです。

 

保証人になっている場合、まだ債務にはなっていなくても、将来的に確定債務になる危険性があります。確定債務とは、まだ支払われていないが支払うことが確定している債務のことをいいます。

 

そんなことはほとんど起こりえないと気楽に考えてしまってはいけません。筆者と同業の税理士でも、保証債務が確定債務となって降りかかってきたケースはあります。

 

税理士は案外、保証人になるケースが多いのです。顧問先から頼まれると付き合い上、やはり嫌とは言いにくいことがあります。しかしそうして顧客の保証人になったものの、顧問先が借金を返せず、保証人となった税理士が債権者に追いかけられ事務所を閉鎖した、という話は少なからずあります。いつどこで保証債務に追い立てられるかわかりません。

 

また、私の知人で友人の保証人になった人もいます。結果、その友人が返済をせずに雲隠れ。本当に真面目で気のいい人だったのですが、友人の借金の保証人になったばかりに債権者に追いかけられ、結局は自己破産してしまいました。

 

金融機関から融資を起こす場合、一般的には土地や建物に抵当権を設定します。個人保証をすることもあります。会社を経営している場合や、家族の誰かが借り入れを起こす時にその者が所有する適当な資産がない場合は、親の所有する不動産を担保に提供することもよくあることです。

 

もちろん当事者は個人保証をすることになりますが、その時に友人、知人を巻き添えにしたのが先ほどの例です。

 

その借入金の返済が滞れば担保提供している土地を売却して借入金の返済をしなければなりませんし、保証人はその債務者に代わって弁済することになります。

 

また、兄弟5人のケースでもありました。5人ともなると、生活レベルはそれぞれ異なっています。4人の兄弟は普通の生活を送っていましたが、次男だけは事業を興してその経営がうまくいかず親のところに来ては、お金を無心していました。

 

最初は親も「しょうがない」と思っていましたが、それが頻繁になってくると事業を閉め、会社に勤めることを進言します。しかし、蓋を開けてみたらいくつものローン会社からの借入金があり、収拾がつかない状態になっていました。

 

そのことが他の兄弟にも知れ、自己破産を勧められます。その後、親の相続が開始して、相続分の中から親から先に引き出した金額を控除して分割協議をしました。このケースでは自己破産をしてからの相続ですが、もし自己破産をしていなかった場合はどのようになったことか、想像するのも怖いものです。

相続税の計算上、控除できない「不確定債務」

貸付金の場合も注意が必要です。

 

親が次男に渡したお金は、貸付金として相続財産を構成します。返してもらえないお金です。しかし、将来、次男の経営する事業がうまくいけば返済は可能です。つまり、自己破産をしなければ貸付債権のままとなりますが、自己破産を行ったことで貸付金債権が消滅したわけです。

 

担保提供した不動産も考え方は同じです。借入金が完済されれば抵当権は消滅しますし、保証人も外れます。しかしどうなるかわからない不確定債務のままでは、相続税の計算上債務として控除することはできません。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続財産を3代先まで残す方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続財産を3代先まで残す方法

相続財産を3代先まで残す方法

廣田 龍介

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担…。 現代の相続には様々な問題が横たわり、その中で、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族もあれば、全員で一致団結して知恵を出し合い、先祖代々の資産を守っていく…

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