前回は、相続税を「債務」として捉えるべき理由を説明しました。今回は、相続税の納税資金を比較的簡単にねん出する方法を見ていきます。

優良資産を「納税資金獲得」のために売却してはダメ

前回紹介したような、高級住宅地に住んでいる人でも、必ずしも納税資金を確保できるわけではありません。相続税は累進課税ですから、財産の相続税評価額が大きければ、その分、相続税も多く納税しなければなりません。

 

棚卸をして、相続税の試算まで進むことができれば、納税資金の多寡もわかりますし、不足しているかどうかもわかってきます。場合によっては、土地そのものを税金として差し出す「物納」という手も検討できますし、その準備を進めることができます。

 

しかし納税資金に困ったからといって、底地や財産価値の低い別荘などは売りにくいので手元に残し、収益性の高い優良資産はお金にしやすいからそれを売却して納税資金とする、という状態は避けたいものです。これでは納税資金が確保できても、遺族に不良資産だけを残すことになってしまいます。

 

また、これまでの連載で説明した、底地・借地の整理、不動産の権利調整、貸付金等の整理などは不良資産から優良資産への組み換えを進めていくことでした。組み換えと同時に換金性・収益性を高めておくことも当然考えますから、それができていれば、納税資金をねん出しやすい状態にもなっているのです。

「納税義務がある子ども」を受取人として生命保険に加入

さらに、納税資金をねん出する比較的簡単な方法もあります。それは、生命保険へ加入することです。

 

人が死亡した場合に突然襲ってくるのが相続税の負担ならば、人が死亡したことにより突然現金を手にすることができるのが生命保険だからです。相続税の金額から生命保険金で納付したい額が適切かを考慮しつつ、受取人を納税義務が発生する子どもに設定しておきます。

 

生命保険金には、500万円×相続人の数で計算される非課税枠があるので、これを活用します。配偶者が生命保険金を受け取る場合は、相続税の配偶者控除が適用されるため、配偶者が生命保険金を受け取ってもあまり有効ではありません。

 

配偶者が受け取った生命保険金で、子どもの負担すべき相続税を納めると、配偶者である親が子どもに贈与したことになり、贈与税が課税されることになりますので、受取人は子どもにしておきます。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続財産を3代先まで残す方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続財産を3代先まで残す方法

相続財産を3代先まで残す方法

廣田 龍介

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担…。 現代の相続には様々な問題が横たわり、その中で、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族もあれば、全員で一致団結して知恵を出し合い、先祖代々の資産を守っていく…

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