前回は、所有不動産を「相続財産」として次代に引き継がせるべきか、判断するポイントを説明しました。今回は、不動産の価値を下げる「共有状態」を解消する方法を見ていきます。

相続を契機に共有状態になっている不動産も多いが…

昔からの地主さんの場合、自宅周りに貸地を所有している方が大勢います。先代の相続で共有状態になっている不動産が、さらなる相続により兄弟の共有からいとこ同士の共有になってしまったというものもよく見受けます。

 

権利が絡んでいると単独で有効活用をすることができません。銀行の担保価値としても、銀行融資を受けるにしても、制限を受けてしまいます。

 

また、不動産としての価値も下がります。借地権や底地権をそれぞれ単独で譲渡しようとしても、その価額が、土地の更地価額の底地割合や借地割合の価格で売れることはありません。足して1にはならないのです。

共有地の権利調整の方法は5つ

そこで権利調整をして資産価値を高めることを考えます。底地・借地の権利調整には次の4つの方法があります。

 

①底地地主が借地権を買い取る

②借地人が地主から底地を買い取る

③底地と借地の交換をする

④共同で第三者に売却する

 

また、共有状態の土地も権利調整をしなければどうにも活用ができません。その土地を利用することに制限があるにもかかわらず相続税評価額は持ち分で計算されてしまいます。共有の土地の権利調整としては次の5つの方法があります。

 

(1)共有物の分割をする(100坪の土地なら50坪ずつの所有で区切る)

 

(2)他に土地がある場合は、その土地と持分交換をする(自分所有の土地と共有で持っている相手の土地の持分を交換する)

 

(3)他の持ち分を売買する(自分の持分を売るか相手の持分を買う)

 

(4)ビルやマンションが建築できる場合は、土地と建物で等価交換をする

 

(5)一緒に売却する

 

このように権利調整をすることで資産価値がグンと上昇しますし、単独の判断で相続対策ができるようになります。この時、基本的には相続税の評価上、不動産である土地・建物が、面積課税となっていることを踏まえるのです。

 

土地は、路線価が決められていてその価額に面積を乗じて算定します。建物は固定資産税の評価額を床面積に乗じて算定します。この点から相続財産として、有利な不動産とは何かの答えを導き出すことができます。

 

建物の居住空間は生活に必要ですし、賃貸収入を得るためにも一定面積は確保したいものです。しかし土地は小さくても生活には困りません。土地の持ち分が少ないとなると、高層マンションがターゲットになります。持ち分が少ない分、土地への課税は少なくなります。

 

また土地と建物は面積課税なので、1階部分の部屋も最上階の部屋も、同じ床面積であれば相続税評価額も同じです。市場価値の高い高層階の部屋を購入しても同じ評価額です。換金性、収益性、資産価値の安定性等を考慮しながら権利調整をして、資産の組み換えを進めていくことが必要だと思います。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続財産を3代先まで残す方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続財産を3代先まで残す方法

相続財産を3代先まで残す方法

廣田 龍介

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担…。 現代の相続には様々な問題が横たわり、その中で、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族もあれば、全員で一致団結して知恵を出し合い、先祖代々の資産を守っていく…

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