生前対策の完了まで「5年」は見ておきたい
財産の棚卸では「あなたしかわからない財産」の明細を作るところから始めました。そして、その資産があなたにとって優良資産かどうかを見極め、必要であれば権利調整をし、複雑な共有状態になっているのなら分割するなどの対応をする、というところまでお伝えしてきました。
そういった生前対策をすることで、もめる可能性は格段に減るでしょうし、残る財産も多くなっていくでしょう。
しかし、考えておかなければならないのは、棚卸をするにも書類を集めるのにも時間がかかること、また、その後も対策を講じていくのに長い時間がかかることです。
「資産の組み換え」も「等価交換」もすぐにできるとは限りません。不良資産の売却や不良債権の処理、不肖の息子の経営する実体のない会社の破たん処理までやるとしたら、相当の時間がかかるのは言うまでもありません。
理屈がわかっていたとしても、相手がいることでもありますから、簡単に済ませられるものではないのです。また逆に時間をかけないとうまく効果が出ないともいえます。不動産を売却したい時などはなおさらです。相手はこちらに時間がないとわかれば足元を見てくることもあります。
さらにいえば、ここに挙げた生前対策は手始めにすぎません。これより一歩も二歩も進んだ節税対策があります。それを実行していくためには、さらに時間がかかってきます。
以上を踏まえて、どれくらい時間がかかるかの目安として、基本的には5年は見てもらいたいと筆者は考えています。
相続対策は「時間との勝負」…動けるうちから開始を
こう考えると、やはり相続対策は時間との勝負と言えそうです。財産が多ければ多いほど始めるのが早いに越したことはないのです。
まだまだ早い、自分が死ぬなんて縁起でもないとは思わないでください。すべてはもめないようにして、先祖代々の資産をそのまま、もしくは価値を上げて次の世代へと引き渡すためなのです。
また、財産の棚卸をしていれば、その最中に、「これはあの子にあげよう」「事業はこの子に継がせよう」と考えが具体的になってくることも多いはずです。被相続人の財産ですから、まず被相続人がどうしたいかということを考えるのは重要なことです。実はこれが、その次のステップになっていきます。
財産の棚卸が終了し、ある程度資産の整理ができても、もめることはあります。自分が一生懸命にいろいろな対策を講じたとしても、それが被相続人の思い込みなどからくるものであれば、相続人にとって必ずしもいいこととはいえません。
せっかくの生前対策が徒労に終わらないように、何をすべきか。それは、連載「『信託』と『遺言』で3代先まで財産を引き継ぐ相続対策」にて説明しています。