人間の心理についての普遍的な法則
ビール好きなひとなら思い当たると思います。暑いサウナから出た後に飲む一口目のビールの喉越しは格別のものですが、2口目3口目と飲み進めるうちにその快感は逓減していき、2杯目のジョッキを手にする頃には完全に惰性となっていますよね。これを「限界効用逓減の法則」と言います。
これは「ある財の消費を増やしていくと、限界効用はしだいに小さくなっていく」という法則であり、先ほどの例だとビールは財であり、限界効用とは、その財(ビール)の消費量を1単位増加させたときの効用(満足度)の増加分を言います。言い換えるとビールを追加1単位消費するごとに得られる効用はしだいに小さくなっていくのです。
この法則は人間の心理についての普遍的な法則ですから、当然お金という財とその効用についても当てはまります。例えば時給800円で働く学生アルバイトが「来月から時給を100円アップしてあげましょう」と言われたらすごく喜ぶと思います。
しかし同じ人がその後医師になり、時給を2万円取るようになってから、「来月から時給を(同じ1単位の)100円アップしてあげましょう」と言われたら? さすがに要らないとは言わないけれど…、「それっぽっちで妙に恩着せがましいことを言われたな」と気分を害するかもしれません。
お金と幸福の関係についてはノーベル経済学者のダニエル・カーネマン教授の研究結果があります。アメリカ人は年収7万5000ドルを超えると、そこから年収が増えても幸福度がほとんど上昇しなくなるというものです。
日米の物価がほぼ同じくらいと仮定すると、日本人も年収800万円を超えるとそこから年収が増えてもたいして幸福度は上がらないということになります。年収800万円は一人あたりの収入ですので、婚姻世帯では倍の1600万円ということになります。生活資金に不安が無く、衣食足りたうえに海外旅行を楽しんだり、ブランド品を買ったりできる、世間一般の考える〝豊かな生活〞を可能にする収入です。