社会貢献・循環型社会の実現ができる仕組み
食品ロスの削減と飲食店の収益増を実現するアプリ
■事業:TABETE(タベテ)
■運営:株式会社コークッキング
〈ビジネスモデルの概要〉
コークッキングは、フードシェアリングアプリのTABETEを中心に事業活動を展開する日本のスタートアップです。2015年に設立後、TABETEを正式にリリースしてから3年で1,500店舗超の掲載、40万人超の利用登録を得るなど、着実な成長を実現しています。TABETEは、「予約が突然キャンセルされた」「来店客数を読み間違った」「飾り付けに失敗した」などの理由で余ってしまった食品を販売したい飲食店と消費者をマッチングするサービスです。
その最大のメリットは、深刻な社会問題である食品ロスを減らせることにあります。実際、TABETEは3年間で57トン相当の削減を実現しました。自治体との連携で周知を図ることができているのも、その社会的意義を評価された結果といえるでしょう。
TABETEは、食品ロスの削減を通じて飲食店にさまざまな価値をもたらします。第一に、捨てられていたはずの食品を売ることで収益を得られるだけではなく、廃棄コストを低減できます。ecbo cloak(前述)と同様に、広告費をかけずに集客を得られるという利点もあります。従業員は、食品を捨てることのストレスから解放されるばかりか、社会的意義のある取り組みに携わることで定着率が向上するかもしれません。
消費者からしても、手頃な価格で食事を楽しめるだけではなく、食品ロスの削減に貢献できます。地球環境の改善に役立ちたい人への機会の提供であると同時に、循環型社会の実現に対する社会の関心を高める効果もあるでしょう。
進化の方向性
環境への意識が高まっているとはいえ、飲食店での通常価格と変わらなければ、ほとんど売れないはずです。つまりTABETEがやっていることは、閉店近くになると肉や魚、惣菜などを値引販売するスーパーと同じだといえます。要は、賞味期限に応じて価格を弾力的に引き下げることが肝なのです。
現状、TABETEを介して出品される商品の価格は、飲食店が任意に設定しています。ダイナミックプライシング(需要と供給に応じて販売価格を変動させる仕組み)を導入し、その価格を閉店までの時間と在庫量に応じて自動的に最適化することができれば、食品ロスの削減と収益の最大化という新たな価値を両立できるかもしれません。
小野塚征志
ローランド・ベルガー