(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年10月からの実施が予定されている消費税のインボイス制度について、2022年11月17日、政府・与党が、新たに課税業者となる中小事業者の税負担を和らげる「激変緩和措置」の導入を検討していることが判明しました。背景には、インボイス制度が零細の個人事業主・フリーランスにとって酷な制度であるという否定しがたい事実があります。本記事では、インボイス制度のしくみと問題点について解説します。

消費税のインボイス制度とは

まず、消費税のインボイス制度がどのようなものか解説します。

 

◆消費税のしくみ

インボイス制度について理解するには、まず、その前提として、消費税の基本的なしくみについて押さえておく必要があります。

 

消費税は、「間接税」の一種で、商品・サービスの「売主」が販売価格の10%ないし8%を納税する義務を負います。

 

その代わりに、「売主」は、商品・サービスを「買主」に販売する際、販売価格に消費税相当額を上乗せする形で回収します。

 

すなわち、消費税は、以下のように、「納税義務者」と「税負担者」が分かれています。このような税を「間接税」といいます。

 

・納税義務者:商品・サービスの「売主」

・税負担者:商品・サービスの「買主」

 

普段、買い物をするときに消費税を含めた代金を支払っていますが、厳密には、あれは納税ではありません。業者側が価格に転嫁している消費税相当額を負担しているにすぎないのです。

 

ややこしいのは、同一の商品・サービスについて「売主」「買主」の関係が複数積み重なっている場合の、中間にいる「売主」です。

 

商品であれば「卸売業者→小売業者→消費者」というケースです。また、サービスであれば、「孫請け業者→下請け業者→注文者」というケースです。

 

まず、「卸売業者→小売業者→消費者」の場合、間の「小売業者」は、「消費者」から消費税相当額(Aとする)を受け取っていますが、「卸売業者」からの仕入れの際に消費税相当額(Bとする)を負担しています。したがって、「小売業者」が国に納税するのは「A-B」の額です。

 

また、「孫請け業者→下請け業者→注文者」の場合、間の「下請け業者」は、「消費者」から消費税相当額(Cとする)を受け取っていますが、「孫請け業者」に報酬を支払う際に消費税相当額(Dとする)を負担しています。したがって、「下請け業者」が国に納税するのは「C-D」の額です。

 

インボイス制度について知るうえで、このことをよく理解しておく必要があります。

 

◆インボイス制度は消費税を確実に回収するためのしくみ

インボイス制度は、正しくは「適格請求書等保存方式」といいます。インボイスは「適格請求書」といって、決まった様式の請求書です。「間違いなく法令にのっとって消費税分の額を支払いました」という証明のために発行されます。

 

たとえば、先述した「孫請け業者→下請け業者→注文者」の例でみると、「下請け業者」は「孫請け業者」からインボイスを受け取らないと、自分が「注文者」から受け取った代金についてかかる消費税を計算する際に、自身が支払った消費税分を控除できないのです。

 

インボイス制度は、前述した消費税の特殊な性質、すなわち、納税義務者と税負担者が分離しているという性質を前提として、消費税を確実に回収するためのしくみとして導入されるものです。国の立場に立って乱暴ないい方をすれば「とりっぱぐれを防ぐ」ということです。

 

消費税自体の是非はさておき、以上の基本的なしくみだけみれば、一見、消費税の税負担の流れを明らかにする適正な制度であるかのように思えます。

 

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