(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年10月からの実施が予定されている消費税のインボイス制度について、2022年11月17日、政府・与党が、新たに課税業者となる中小事業者の税負担を和らげる「激変緩和措置」の導入を検討していることが判明しました。背景には、インボイス制度が零細の個人事業主・フリーランスにとって酷な制度であるという否定しがたい事実があります。本記事では、インボイス制度のしくみと問題点について解説します。

インボイス制度の何が問題なのか?

しかし、インボイス制度には、大きな問題があります。それは、インボイスを発行できるのは、消費税の「課税事業者」に限られるということです。

 

どういうことかというと、消費税には、「免税事業者」の制度があります。これは、年間の売上が1,000万円以下の零細な個人事業主・フリーランスが該当します。免税事業者の制度は、零細な事業者の消費税の計算にかかる事務の負担が重くなることを考慮してのものです。

 

そして、「免税事業者」はインボイスを発行できません。したがって、取引先は、消費税の納税の際に、免税事業者に支払った消費税相当額を控除することができません。

 

その結果、免税事業者と取引する相手は、以下のどちらかを選ぶことになります。

 

・免税事業者との取引をやめる

・免税事業者に対し消費税分の値引きを要求する

 

そうなると、免税事業者は、今までの取引先を失うか、あるいは、これまで受け取っていた報酬・代金の減額に応じるか、いずれにしても、困窮することになります。

 

インボイスを発行しようとすれば、敢えて「課税事業者」になるしかありません。

 

ここまでお読みになって、「免税事業者も本来なら消費税を払うべきなんだからやむをえないのでは?」「今までちゃっかり自分の懐に入れていただけじゃないか」などと感じる人もいるかもしれません。

 

現に、有名な実業家・YouTuberの「ひろゆき」氏などは、評論家の宮崎哲弥氏との対談のなかで、「インボイス制度がどうこうといっているのは筋が悪い」「個人事業主が消費税払わなくてすんでいたから10%分得していた。しかし、これから10%払わなければならないから収入が10%減るよねという話」などと放言しています。

 

しかし、これはあまりに表層的なとらえ方、問題の矮小化といわざるをえません。ことはそう単純ではありません。

 

ほんの少し想像力を働かせることができればわかるはずのことですが、免税事業者との取引においては、免税事業者が消費税を支払う必要がないことをあらかじめ織り込み済みで、報酬額・代金額を低く設定しているケースが大半です。

 

つまり、かなり多くの免税事業者が、自身が消費税の納税義務を負わない代わりに、取引先にも消費税分の額を請求してきていないという実態があるのです。

 

むしろ、取引先のほうが、本来、非課税事業者に支払っていない消費税相当額を、仕入れ分として控除している可能性すらあるといっても過言ではありません。

 

もちろん、経過措置として、インボイス制度実施後の10年間、免税事業者と取引した事業者は、仕入税額相当額の一定割合を控除できることになっています。以下の通りです。

 

・2023年10月~2026年9月:80%控除

・2026年10月~2029年9月:50%控除

 

しかし、これでは、課税事業者と取引してインボイスの発行を受けるよりも不利であることに変わりはなく、免税事業者にとって酷な結果になることに変わりはありません。

 

すなわち、国は、一方で免税事業者という制度を置いておきながら、一方ではインボイス制度という免税事業者の制度を実質的に否定するような制度を導入しようとしているということです。

 

政府・与党がどのような「激変緩和措置」を考えているのか現時点では不明ですが、インボイス制度自体のあり方も含め、「付け焼刃」「その場しのぎ」ではない、社会経済の実態に即した、公平かつ納得感ある措置を講じることが求められています。

 

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