リベンジ消費で国内需要回復
需要面では、個人消費と投資が第3四半期の主な成長要因でした。行動規制がほぼ無くなる中、いわゆるリベンジ消費が強い個人消費をもたらした。この急速な成長は、レストラン、旅行、観光などの分野で顕著です。個人消費は前年同期比で8%増加し、第2四半期の8.6%よりは減速しましたが、前年同期の7.1%よりは加速しました。前四半期比では、5.7%増加しました。この経済パフォーマンスの要因として、学校が対面授業を再開したことが大きいとも言われています。
GDPの構成要素である資本形成つまり投資活動は、昨年の20.8%増から今第3四半期には21.7%増に跳ね上がりました。また、前四半期の21.1%よりもわずかに大きくなっています。しかし、7月から9月にかけての政府支出の伸びは、0.8%に止まり、前年同期の13.8%増、前四半期の11.1%増を大きく下回りました。通常、大統領選挙のElection Yearは、政府支出が大きく伸びるのですが、今年は、政府が上半期に支出を前倒しした可能性があります。
フィリピン輸出入も好調に推移
商品とサービスの輸出は、前年同期の9.1%増、第2四半期の4.4%増に対して対前年13.1%の大幅増となりました。主な要因は、BPOなどのサービス輸出が32.5%増、建設が11.8%増、耐久設備が11.6%増でした。輸入も同様に17.3%増加し、前年同期の12.7%および前四半期の13.8%を大きく上回りました。
生産面では、すべてのセクターが対前年プラス成長を維持し、大きなものは、サービスが9.1%、工業5.8%、農業は2.2%です。前四半期比で、サービスは4.2%、農業は1.6%、工業は0.8%増加しました。
海外で働くフィリピン人いわゆるOFW(Overseas Filippino Worker)を中心とした海外からの所得は94.6%増と大きく回復してきました。前年同期は、コロナ禍で52.4%のマイナスでした。今年に入り回復基調に入り、第2四半期65.3%増でした。GDPと貿易収支を合算した経常収支は、前年同期の2.8%、前四半期の9.3%から10.5%プラスとなりました。
インフレ高止まりで成長鈍化の予想も
今後のフィリピン経済の見通しですが、第3四半期のGDP成長率が予想を上回ったため、フィリピン中央銀行は、上昇するインフレに対処するために金融政策をさらに引き締める余地が生まれました。INGバンクマニラのシニアエコノミスト、ニコラスアントニオT.マパ氏は「力強い経済成長により、中央銀行は年末までに政策金利を5.5%に押し上げる可能性が高く、BSPは引き続きタカ派であると予想しています。」としています。
一方、経済は今後数四半期で減速する可能性が高いとするエコノミストもいます。インフレは高止まりとなり、個人消費を圧迫し、さらに、商品価格の上昇、世界的な金融引き締め、先進国の景気後退、中国経済の減速など、外部からの逆風が強まり、フィリピンの商品輸出に対する需要が減少する可能性があるからです。ムーディーズのレポートは、フィリピン経済は2022年年末まで7%以上の成長見通しだが、高インフレは2023年初頭まで続く可能性が高いとしています。
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