(※画像はイメージです/PIXTA)

厚生労働省は2022年11月11日の社会保障審議会の医療保険部会において、出産育児一時金について75歳以上の高齢者に7%分を負担させる方針を示しました。後期高齢者医療の保険料に上乗せする形ですが、後期高齢者医療制度あり方を大きく変える可能性があるものといえます。

出産育児一時金の増額とは

まず、出産育児一時金の制度と、2023年度からの増額の経緯について簡単におさらいします。

 

出産育児一時金は、女性が出産した場合に、健康保険から、子ども1人につき原則として42万円を受け取れる制度です。2023年度から5万円増額され47万円になることが決まっています。

 

出産育児一時金が増額されることになった理由は、出産費用が上昇し続け、42万円では賄えないケースが増えてきたためです。

 

2012年以降でみると、2012年は平均値416,728円・中央値410,110円だったのが、2019年には平均値460,217円・中央値451,120円と、7年間で約10%も上昇しています(【図表1】参照)。また、2022年分はさらに上昇するものとみられます。

 

厚生労働省保険局「第136回社会保障審議会医療保険部会資料」より
【図表1】出産費用の推移(全施設) 厚生労働省保険局「第136回社会保障審議会医療保険部会資料」より

 

これに対し、出産育児一時金の額は、2009年に現行の42万円に設定されて以来、これまで増額されてきませんでした。今回の増額は、出産費用の著しい増加に合わせたものです。

後期高齢者医療制度とは

次に、後期高齢者医療制度についても説明を加えておきます。

 

後期高齢者医療制度とは、75歳以上の「後期高齢者」と、一定の障害がある65歳~74歳の人について、自己負担額を原則として1割(所得によっては2割負担または3割負担)とする制度です。

 

2008年から、既存の公的医療保険制度と別の制度として導入されたしくみです。

 

患者の自己負担額以外の財源については、現役世代からの「支援金」(約4割)と公費(約5割)でまかなうことになっています。すなわち、所得の高い傾向がある現役世代が、所得が低く医療費がかかる傾向がある75歳以上の後期高齢者に対する支援を行っているということです。

 

ただし、後期高齢者のなかでも、所得の差があります。そこで、医療費の自己負担割合以外にも、保険料の負担について、所得による差が設けられています。

 

まず、保険料の額は以下の2つから構成されています。

 

・均等割:被保険者全員が均等な額を負担する(単位:円)

・所得割:所得に応じて負担する(単位:%)

 

これらのうち、「均等割」は、原則として均等な額を負担することになっていますが、所得が低い場合は軽減されます(【図表2】)。

 

厚生労働省「後期高齢者医療の保険料について」より
【図表2】「均等割」の所得ごとの保険料軽減割合 厚生労働省「後期高齢者医療の保険料について」より

 

次に、「所得割」は、所得に応じて負担割合が高くなっていきます。

 

そして、「均等割」と「所得割」を合計した額が最終的な保険料になります。2022年度の全国平均保険料率は、「均等割」が 47,777円、「所得割」が 9.34%です。また、保険料には上限が設定されています。上限額は2022年時点では年66万円です(【図表3参照】)。

 

厚生労働省「後期高齢者医療の保険料について」より
【図表3】後期高齢者医療保険制度の保険料のイメージ(2022年度) 厚生労働省「後期高齢者医療の保険料について」より

 

なお、現在、この上限額を年80万円まで増額することが提案されています。

次ページ出産育児一時金の一部を後期高齢者に負担させることの重大な意味

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