玄関ドア前の自転車が邪魔、ゴミの指定日を守らない……共用部分の使い方に関するクレームから住人同士のトラブルに発展するケースも少なくありません。アパートオーナーとして、こうしたトラブルを未然に防ぎ、住人の満足度を高めることが重要です。トラブルを防ぐにはどうすればよいか、また、実際にトラブルが発生した場合どのような解決策があるか、自身も不動産投資家としての顔を持つ山村暢彦弁護士が解説します。
現実の監視カメラの設置は、違法?適法?
たとえば、管理会社などがゴミ置き場に防犯目的のために監視カメラを設置するのは、問題がない行為といえる場合が多いと思います。
あくまで共用部ですから、個人を特定、監視する目的があるとはいえないでしょうし、ゴミに火がつけられるような事態も考えられますから、防犯目的のための設置の必要性も高いでしょう。
ここでも気をつけなければならないのは、撮影した際にどのような範囲で映り込みが生じるかということです。
ゴミ置き場の入り口付近だけを撮影できていればよいですが、一緒に部屋が映り込んでしまい、特定の部屋の出入りを常に監視できるような形になってしまうと、プライバシー侵害の責任を問われかねないでしょう。
通路への監視カメラの設置は、やや気を遣う問題です。どうしても部屋の出入りを撮影できてしまいますのでプライバシー侵害の問題が生じます。
他方、通路に勝手にゴミが捨てられているとか、物がおかれていて、誰かを特定するなどの必要性があれば、監視カメラ設置の必要性があるといえます。
このような場合には、①具体的に生じた問題に対して、②その問題解決のために一定期間に限って監視カメラを設置し、③そのうえで特定住居だけが映り込むような形ではなく、通路を一望できるような形で撮影すれば、特定の方のプライバシー侵害があるとはいいづらくなるので、このような配慮のもとで進めていくべきかと思います。
とはいえ、近年、プライバシーや個人情報保護の機運は高まっています。大家さん、管理会社としても、注意を払って対応を進めていくべきでしょう。
プライバシー侵害もケースバイケースの判断が多いので、できればお近くの専門家にもご相談のうえ、慎重に進めていくのがよさそうです。
山村 暢彦
山村法律事務所
代表弁護士
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弁護士法人 山村法律事務所
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実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
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