融資の際に不可欠な「物件評価」…“DSCR”を重視
主に中古1棟アパートに融資している担当者。融資にあたって物件評価をどのように行っているのでしょうか。
「私たちの商品特徴の1つは、融資期間です。法定耐用年数をすでに経過した物件でも最長35年のローンが検討可能となります。なぜそうしたことが可能なのかといえば、土地、建物の積算価格といった担保評価額だけで物件をみるのではなく、”DSCR”をみているからです」
DSCRとは“Debt Service Coverage Ratio”の略で、「元利金返済カバー率」などと訳されます。1年間の純収益が年間のローン返済額(元金分と利息分の合計)の何倍あるかを計算したもので、1倍を下回ると借入を返済できない状態です。不動産投資では、DSCRは少なくとも1.2倍以上あることが望ましいとされます。
「DSCRは物件の稼ぐ力に着目したもので収益還元の考え方に近いですが、ローンとの関係を重視している点が収益還元とは異なります。
しかも、私たちがみるのは購入当初のDSCRだけでなく、想定される返済期間の最初から最後までです。さらに、金利については、実際の貸付金利ではなく審査基準金利(現在は3%)を適用し、空室率は最大25%まで想定します。そこまで厳しい条件でDSCRをみるからこそ、最長35年返済が検討可能となります。
また建物と設備については、原則として修繕することが前提となります。物件の状況によっては、建築の専門家によるインスペクションレポート(※)を確認しリフォームやメンテナンスが、適切に行われているかどうか確認します。もし適切に維持管理されていないようであれば、いくらDSCRが高くても融資はできません」
※ インスペクションレポート…住宅購入前に買い主側が行う物件調査(インスペクション)の結果が記載されたレポートのこと
そのほか、担当者の銀行ではフルローンは行っておらず、総事業費(物件価格+購入諸費用)の10~20%自己資金を入れてもらうのが基本だといいます。
「投資家のなかにはフルローンにこだわる人もいらっしゃいますが、自己資金を投入してもその分を運用しているという理解が正しいと思います。そもそも貸家業というビジネスには、さまざまな不確定要素があるものです。それをヘッジする意味でも、フルローンではなく1~2割程度の自己資金を入れておくほうが健全です。多少空室が発生しても慌てずにすみます」
なお、担当者が融資相談やセミナーでよく投資家にアドバイスするのは、物件を購入したら、建物や設備の修繕記録(見積書、仕様書、施工前後の写真など)をきちんと取っておくこと。そうした記録がきちんとあることで、将来売却するとき買い手に安心感を持ってもらうことができるといいます。