(※写真はイメージです/PIXTA)

数ある賃貸トラブルのなかでも特に多いのが、騒音や無許可での同居です。大家としては、こうした厄介な入居者には退去してもらいたいところですが、実は、これらの賃貸トラブルがあったとしても、必ずしも賃貸借契約を解除できるわけはありません。では、こうしたトラブルに巻き込まれた場合、どのように対処すべきでしょうか。自身も不動産投資家としての顔を持つ、山村暢彦弁護士が解説します。

過去、実際に起きた裁判の事例

なかなか難しい問題ですが、相当酷いときには騒音問題などに対処できた裁判例もあるので、ご紹介します。

 

区分所有マンションの事例ですが、管理組合がある特定の部屋に住む入居者に対して、夜間午後10時~午前6時のあいだに、60dB(※)を超える騒音を起こさないようにと差し止め請求を認めた裁判例があります(東京地判、平26.11.5、ウエストロー・ジャパン)。
※ 60dB…走行中の自動車内、普通の声での会話、デパートの店内レベル

 

管理組合が、騒音を何度も記録していたことが証拠として示されており、判決内容でも、環境庁が告示した「騒音に係る環境基準」を参考に、夜間(午後10時~午前6時)に60dBを超える音量は「騒音」にあたると認定されています。

 

この裁判例を参考にすれば、(1)騒音計で騒音を測定、記録し(2)環境基準と比べて騒音と呼べるものであることを立証するというのが大事です。ただ、いうほど簡単ではなく、なかなか難しいです。

 

他方、無許可同居だけで立退請求まで認められるような裁判例は、筆者が調べた限りでは、見当たりませんでした。

 

また、騒音とも絡むものですが、この手に関連する話で立退請求が認められている事例としては、騒音を含めた迷惑行為の程度が非常に酷く、「迷惑行為による立退請求」が認められている裁判例なら多数散見されます(東京地判平10.5.12判事1664―75他)。

 

ただ、こちらの裁判例や前述の騒音の裁判例も含め、立退を認めているものは、警察を呼ぶレベルで迷惑行為の程度が酷いものが多く、現実の多少の迷惑行為や騒音クレームなどに対処できるような裁判例はなかなかないのが現状です。

トラブルの「予防法」と「対処法」

現実的な「騒音」「無許可同居」などの対処は、ご紹介したように裁判沙汰にすれば、なんとかなると期待してはいけません。軽微な契約違反は賃借人を追い出すところまで認定されず、現実には、管理会社や大家さんからたびたび警告を出すなど粘り強い対応が必要です。

 

ただ、この2つのトラブルについては、「証拠がなくスタート地点」に立てないというのが類似する問題点です。

 

このため、抜本的な解決策ではなくとも、(1)騒音については、騒音計を購入して、記録付けするような対応を取る、(2)無許可同居については、防犯目的として監視カメラを設置し入居者、利用者の確認を副次的に行う、などが現実にできる対処法かと思います。

 

監視カメラについては、あくまで廊下や入口などの共用部に設置するのが重要であり、いうまでもなく室内に勝手に監視カメラを設置すると住居不法侵入罪など、逆につかまりかねません。

 

現実にトラブルが生じたら、お近くの専門家にも確認を取って進めていくのがよいでしょう。

 

 

山村 暢彦

山村法律事務所

代表弁護士

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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