不動産市況はいま空前の「売り手市場」となっています。ところが、不動産仲介業者の間では、売主の利益よりも自分の利益を優先する行為が横行しており、売主が納得いかない形での売却を迫られるケースがあとを絶ちません。そこで、売主にとっての新しい選択肢として登場しているのが、売主の利益だけを追求し、売却に関する支援を行う「不動産エージェント」です。
不動産仲介業で蔓延する顧客への「背信行為」の実態
不動産の売却を仲介業者に依頼したにもかかわらず、買い手が見つからず物件がなかなか売れないという悩みをもつ方は少なくありません。売れない理由をいくら担当者に尋ねても、「いろいろと広告・宣伝を打ってはいるのですが反響がなく……」と煮え切らない返事をされるばかりです。
しかし、いざ蓋を開けてみると、実は仲介業者が売主のあずかり知らぬところで自分たちの利益を重視し、恣意的に物件情報の流れを操作していたという話は珍しくありません。具体的にいうと、例えば他社から「内見希望者がいる」という問い合わせがあったとしても「実はもう他の方と売買取引することが決まっているので」と、平然と嘘をついて問い合わせを断るのです。
なぜこのような行為に及ぶかというと、自分たちの利益を重視する不動産会社は売主からの手数料だけでなく買主からの手数料も稼ぎたいため、自分たちで買主を見つけたいという狙いがあります。そのため売主にとってプラスになる話が舞い込んできても双方から手数料が得られない場合は、その話を断るのです。
信じられないような話かもしれませんが、こういった商慣習が当たり前のように横行しているため理想の不動産売却をできずに悩んでいる方たちがいるのです。
この他にも、希望価格では買主が見つからず不動産会社から値下げを提案されている方や、すぐにでも売却したいのに業者が全然動いてくれないと不満を抱く方もいます。これらの場合は、もし売却することができても買主が見つかるまでのプロセスや販売価格が決定した経緯について十分納得することができずに、売却後に「ベストな売却ではなかった」と後悔する結末を迎えかねません。
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長
大西 倫加(おおにしのりか)広告・マーケティング会社などを経て、2003年さくら事務所参画。同社で広報室を立ち上げ、マーケティングPR全般を行う。2011年取締役に就任し、経営企画を担当。2013年1月に代表取締役就任。2008年にはNPO法人 日本ホームインスペクターズ協会の設立から携わり、同協会理事に就任。10年間理事を務め、2019年に退任。2018年、らくだ不動産株式会社設立。代表取締役社長就任。2021年、だいち災害リスク研究所設立。副所長就任。不動産・建築業界を専門とするPRコンサルティングも行っており、執筆協力・出版や講演多数。
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連載悩める売主を救う「不動産エージェント」という選択
さくら事務所 会長
らくだ不動産 顧問
1967年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会初代理事長。1999年、不動産コンサルティング会社「さくら事務所」を創業する。著作に『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』、『マンションバブル41の落とし穴』(小学館新書)など多数。
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