(※写真はイメージです/PIXTA)

年金だけで老後生活を送ることが難しくなってきた現在、多くの人が資産形成に励んでいるが、必ずしも目標通りの結果が得られるとは限らない。不足分は働いて補うしかないが、年齢を重ねた心身への負担は大きい。ケース例を見ていく。

団塊ジュニアでも支えきれない、団塊世代の年金

第二次世界大戦後の第1次ベビーブーム、1947年~1949年生まれの「団塊の世代」は、現在年金受給者となっている。しかし、現在の労働層23歳~65歳の人数では、団塊の世代の年金を支え切るにはいささか心もとない。

 

第2次ベビーブームとなった1971年~1974年生まれの「団塊ジュニア」も含まれているとはいえ、それでも日本の高齢者たちの年金負担は大きすぎるのだ。

 

現状における年金受給額を見ていこう。

会社員世帯夫婦の平均受給額、月およそ22万円

日本の年金制度は、国民が一律に受け取ることができる「老齢基礎年金」と、会社員や公務員が受け取ることができる「老齢厚生年金」の2階建て構造だ。

 

一般的な金額として、「老齢基礎年金」の平均受給額は月およそ5万円、「老齢厚生年金」の平均受給額は月およそ15万円といわれている。

 

会社員世帯の夫婦の受給額合計の平均は、月およそ22万円。夫婦2人とも老齢厚生年金を受給する場合は、単純計算で月およそ30万円。一方、2人とも「老齢基礎年金」のみを受給する場合は月およそ10万円となる。

 

自分の受給額と受給できる時期については、「ねんきん定期便」で、確認しておくようにしたい。

足りない老後資金「自分でどうにかするしか…」

厚生労働省『令和2年 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、令和2年の厚生年金保険(第1号)受給者は3,581万人、受給者の平均年金額は「14万4,366円」となっている。従来より目安とされてきた「15万円」からジワジワと減少している。

 

65歳から5歳刻みにした老齢年金平均月額は、下記の通りとなっている。

 

65歳~69歳:143,069円

70歳~74歳:145,705円

75歳~79歳:150,569円

80歳~84歳:159,529円

85歳~89歳:162,705円

90歳以上 :161,506円

 

なお、厚生労働省の『令和2年 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)』によると、平均支出額は月額25.5万円。平均年金受給額の15万円を受給する人なら、毎月10.5万円が不足することになる。このギャップを埋めるには、若い年齢のときから老後資産形成を目標に、貯蓄や資産運用に励むほかない。

 

政府も資産形成を促す仕組みづくりとして「つみたてNISA」「iDeCo」といった策を打ち出しているほか、70歳までの就業機会確保を視野に入れた「高年齢者雇用安定法」の改正にも着手している。

定年退職後、近所の商店でアルバイトをする69歳

定年退職となる年齢が上がれば、老後資金の問題もある程度は軽減できるかもしれない。だが、目指していたはずのゴールがことあるごとに遠くなる就労者たちはたまらない。

 

定年後の過ごし方について、川崎市在住の元サラリーマンの男性に話を聞いた。

 

佐藤さん(仮名)は、65歳で機械部品を扱う商社を定年退職。その後は69歳の今もアルバイトを続けている。

 

――年金の状況を教えてください。

 

「勤務先が中小企業で、給与自体が平均より低かったから、年金受給額も平均より少ないですね」

 

――今のお仕事と働き方を教えてください。

 

「最初のころは、友人が経営する小さな学習塾で、事務の手伝いなどをしていました。しかし、コロナで畳むことになって。いまは単発のチラシ配りのほかに、近所の商店でアルバイトをしていますよ」

 

――収入面はいかがですか?

 

「やらないよりマシですかね。まあ、近所の仕事なので気持ちも体もラクですし、一緒に働いているスタッフともおしゃべりできるし、その点は楽しいですけれども」

 

――貯金額の目標などはありますか?

 

「貯金? まさか。毎日の生活費の足しにしているだけですよ。サラリーマン時代の貯金はできるだけ残しておかないと、これから先何があるかわかりませんしね」

 

佐藤さんは、自分の親から相続した小さな一戸建てに夫婦で暮らしている。4歳年下の妻も、いまだに週2回ほどパートをしているという。子ども2人はかなり前に結婚して独立した。

 

「子育てしているときは、もっと広いくて新しいところで暮したいと思っていましたが、この状況でしょう? 住宅ローンがなかったのはラッキーでしたよ。雨風しのげて、われわれの寿命までもってくれたらそれで十分かなと。子どもの負担にならないよう、気力で頑張っています」

 

目の前のことに必死になっていたら、こんな状況になっていたと、佐藤さんは明るく話してくれた。ゆとりある老後生活のため、定年退職前からライフプランを練り、綿密にシミュレーションできればベストだが、実際問題、たやすいことではないようだ。

 

 

幻冬舎ゴールドオンライン編集部

 

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