(画像はイメージです/PIXTA)

航空機データをオンラインで提供する英国の評価会社VV Aviation の船舶データブランドVesselsValue提供のレポートより、2022年9月までの船舶に関する膨大なデータをもとに船舶アナリストが分析、解説した文書を翻訳・転載する。

嵐は“水平線”に。港湾労働者のストライキ

エネルギー危機は、ひいては生活費の危機をより広範囲に引き起こす要因の一つであり、世界各地で高まる産業不安を煽るものでもある。英国では2022年8月下旬、最大のコンテナ港であるフェリックスストウで8日間の港湾労働者によるストライキに見舞われた。これは前月にドイツの複数のコンテナ港で行われた2日間のストライキに続くもので、リバプールの労働者も2022年9月末に2週間のストライキを起こした。

 

一方、パンデミック時に港湾の混雑とサプライチェーンの混乱という現象が最初に現れ、まだ再発する可能性のある米国の両海岸では、労使交渉が緊迫した段階に達している。

 

下の図5に示すように、2022年7月のドイツでのストライキも2022年8月のフェリックスストウでのストライキも、北西ヨーロッパのコンテナ船の平均待ち時間にはまだ大きな影響を与えていないが、過去の範囲の上端を推移している。

 

ストライキは、パンデミックの初期に発生した従業員の不在とは少し異なる問題を提起している。空(から)のコンテナはトラックや列車で港に戻され続けているが、それを送り返す船舶がないため、岸辺のスペースは空コンテナの回送でいっぱいになってしまう。そのため、ストライキ終了後の空コンテナのアジアへの回送に一定の船腹が奪われるために、実入りコンテナの輸送に従事できる(稼げる)船腹を減らしてしまい、フリートの生産能力が低下してしまう。 

 

図5:北西ヨーロッパにおけるコンテナ船の平均待ち時間
図5:北西ヨーロッパにおけるコンテナ船の平均待ち時間

港湾の混雑はマクロ経済・地政学的動向のバロメーター

この2年半は、まさに激動の時代だった。パンデミックからロシア・ウクライナ戦争、それに伴うエネルギー・生活費危機、労働不安まで、世界経済の大動脈・静脈における貿易の流れやサプライチェーンを混乱させる、さまざまな予期せぬ脅威が表面化された。この混乱は、港湾の混雑というかたちで最も明確に表れている。そして混雑が解決したと考えるのは誤りであり、したがって、混雑の解決を運賃下落の要因と考えるのもまた誤りである。

 

マクロ経済や地政学的なトレンドの先行指標として、「港湾混雑」はエコノミスト、産業アナリスト、スケジューリングプランナー、サプライチェーンのシニアマネージャーにとって必須のツールキットであることは間違いない。

 

著者:Vivek Srivastava - VesselsValue : Senior Trade Flow Analyst 

日付:2022年9月

本記事の目的は一般的な情報を提供することであり、特定の状況に関連したアドバイスやガイダンスを提供することではありません。

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