累積損失額は2,000億米ドル以上
IATA(国際航空運送協会)によると、パンデミックによる大打撃を受けた航空業界の累積損失額は2,000億米ドル以上となった。前例のない困難に直面した航空会社や空港は生き残るため、スタッフの削減や一時解雇に至るまで、継続的にその対応に追われた。
IATAの分析によると、2021年9月までに、航空業界の直接雇用は世界全体で230万人減少し、21%減になったと推定されている(出典:IATA)。英国政府の発表では、2021年7月31日時点で旅客輸送の雇用51%が一時解雇されたというデータもある(出典:gov.uk)。
今回の件に関して、各国政府は国際的な調整をほとんど行わず、短期間で渡航の停止や制限を行い大きな混乱を招いた。しかし、ワクチン接種率が上昇するにつれ(特にヨーロッパと北米)、旅行に対して徐々に前向きな見解が多くなっていった。近年では入国要件が緩和され、海外旅行は復活しつつある。困難な事態が立て続けに発生したため、航空会社が立て直しを図る時間はほとんどなかったが、旅行需要は予想よりかなり早く回復したようだ。
しかし、労働者は230万人減少し、結果人手不足が発生、キャンセルや大幅な遅延が発生した。このような事態は、特定の航空会社や空港、あるいは国に限ったことではない。
さらに乗客の悩みを深刻にしているのは、ヨーロッパ中の航空会社グループがストライキを計画していることだ。このストライキは、ブリティッシュ・エアウェイズ、SAS、ルフトハンザなどのフルサービス航空会社、またイージージェットやライアンエアーなどの格安航空会社にも影響が及んでいる。その結果、英国だけでも700人以上の労働者が英国の夏季にストライキを行うと推定されている。
このストライキは、航空業界の需要が2019年以前の水準に近づくと予想される夏の期間と重なる。そのため英国政府は、この問題への介入を余儀なくされた。そして7月・8月は1日900便から7月は825便、8月は850便に減便されることになった。
英国政府の制限に加え、ヒースロー空港は、夏の間、遅延をさらに減らすために定員制を導入した。この「キャパシティ・キャップ」という制度は、航空会社、空港、地上職員が1日に出発する乗客数の上限を10万人までと定めたものだ。この定員枠は7月12日から適用され9月中まで継続される予定だという。
パンデミック後の回復
VV Aviationのデータを使用し、計画されているストライキの一部について検証した。英国の大手航空会社らのパンデミック前後の需要、2019年末と2022年の最初の6ヵ月間(1月~6月)を分析。図1は、航空会社が今年これまでにどのような業績を上げているかを次のように見ている。
2022年の上半期に行われた国際線フライトの数を2019年と比較すると、ブリティッシュ・エアウェイズとイージージェットは、2019年の運航便数に迫る勢いである。
もし予測が正しければ、2019年に実施された便数とほぼ同等になる。危機的状況への適応能力が高いことで有名なライアンエアーは、すでに2019年比で3倍近くもレートを上回っている。