弱気相場からの反転…どれほどのインパクトになるか?
フィリピン株式市場は、世界の投資家が景気の低迷や減速を予想するなか、弱気相場(ベアマーケット)の真っ只中にいます。弱気相場とは、株価が直近の高値から20%下落した状態と定義されています。
過去10年間、フィリピン株合指数(PSEi)は5回の弱気相場を経験しました。最大の下落幅は2020年3月で、COVID-19の大流行をきっかけに、PSEiは2019年のピークから52%下落しました
過去10年間のPSEiの弱気相場は、平均29.2%下落、中央値24.9%下落という結果です。現在の弱気相場は、すでに24.5%の下落となっており、10年間の歴史的平均値に近い下落率となっています。さらに、ピークから底値までの平均期間は187日です。過去10年間で最も長い弱気相場は、2015年の暴落で289日間続きました。今回の弱気相場では、すでに251日目に突入しています。
これらのデータからすると、現在の弱気相場がそろそろ底を打つのではないかという見方もできます。
金融政策のタカ派的なスタンスによる悲観論はほぼ織り込まれたように見えますが、現在の引き締めサイクルにはまだ終了していません。米10年国債などのリスクフリー資産の利回り上昇は、株式市場からの資金流出となる傾向が明日ことは周知の通りです。
先物市場は米フェデラルファンド金利が4.7%まで上がると予想しており、FRBが引き締めを続ける中、フィリピン中央銀行(BSP)は、金利と通貨安を管理するという難しい課題に直面しています。
過去5回の弱気相場を振り返ると、谷からピークへの平均リバウンド率は44.2%、中央値は39.7%でした。これらは、長期投資家にとってもバーゲンハンターにとっても魅力的なリターンとなる可能性があります。
しかし、結局のところ、第3四半期の決算が今後数週間の市場の方向性を決定すると考えています。マクロ経済のネガティブなニュースにさらされた後だけに、ポジティブな触媒となる可能性があるといえるでしょう。
コロナからの回復で「航空各社」復調の兆し
一方で、借入コストの上昇、急激なペソ安、高いインフレ率の中で、今後の収益に関する経営陣のガイダンスについては、依然として慎重な姿勢を崩していません。業績の引き下げが予想されるため、フィリピン経済の回復力が試されます。なぜならば、長期的には企業収益と株価は相関するからです。
フィリピン航空(PAL)は、上半期は、7100万米ドルの純利益と1億2500万米ドルの営業利益を計上し、その結果、売上高見込みを従来の20億米ドルの目標を26億米ドルに上方修正しました。経営陣は、年末までにPALの国内売上は完全に回復し、海外売上はパンデミック前の70%の水準に達すると予想しています。
PALやセブパシフィック(CEB)のような航空会社銘柄の業績が、世界的な行動規制の緩和により回復しています。旅行規制の継続的な緩和と、航空会社に対する信頼感の回復により、フィリピンの航空会社は2022年第四四半期について楽観的な見方をしています。
2022年10月10日、観光省(DOT)は、外国人観光客の入国者数は170万人となり、すでに2022年度の目標を達成したと発表しました。また、セブパシフィック航空(CEB)も国際線短距離便が70%以上増加し、旅客数がほぼ倍増したことを明らかにしました。この航空業界の回復は、クリスマスシーズンを迎え、季節的に強い第4四半期も続くと思われます。
これに合わせて、航空各社は、国内線・国際線の運航頻度やキャパシティを増やし、第4四半期の旅客数急増に備えています。過去のデータにおいても、PALは、毎年第4四半期に最高水準の売上高を計上しています。
旅行へのリベンジ消費により、需要は回復しているものの、インフレ懸念や景気後退懸念など、世界的なマクロ経済要因が需要を抑制する可能性があります。インフレの高止まりにより、消費者の購買力が低下し、旅行する余剰資金が減少する可能性があります。また、燃料費の高騰は、これらの企業の利益率に影響を与える可能性があります。