(※写真はイメージです/PIXTA)

景気低迷が長引くなか、多くの企業厳しいビジネス環境に置かれ、従業員の雇用も安定しているとはいいがたい。そんななか、公務員という立場に羨望のまなざしが注がれているが、「安定・高給」と思われていた公務員もすべてがそうではなく、貧困にあえぎ、雇用不安にさいなまれる職員がいるという。実情を見ていく。

平均給与…民間は月33万円、公務員は35万円

『令和3年地方公務員給与実態調査』(総務省)によると、2021年の地方公務員の平均給与は月額35万9,895円だった。ざっくり計算すると手取りは28万円程度。また期末・勤勉手当(民間企業の賞与に該当)は、平均160万~170万円程度で、年収は600万円弱となると思われる。


一方、『令和3年賃金構造基本統計調査』(厚生労働省)によると、平均給与(きまって支給する現金給与額)は33万4,800円、手取り25万~26万円程度。賞与も含めた推定年収は489万円ぐらいだ。あくまでも平均値での比較だが、公務員の給与は、民間企業全体の平均値よりは少々高めという結果になっている。

 

なんといっても公務員の仕事は、抜群の安定感が魅力だ。とはいえ、給与は民間準拠といわれ、景気に全く左右されないというわけではない。しかし、コロナ禍で観光業や飲食業が軒並み大ダメージを受けたように、民間企業では社会情勢その他の要因で特定の業種が危うくなるケースもある。しかし、公務員はそういった不安なく働くことができる。

 

また公務員は、育児休業・時短勤務・介護休暇など、休日・休暇制度などが手厚いのも大きな魅力だ。とくに女性は、結婚、出産といった人生の節目において、働き方やキャリア形成に頭を悩ませがちだが、公務員であれば、少なくとも安定した雇用が保障されていることから、民間企業より経済不安を感じるケースは少なく、有利だといえるだろう。

 

もちろん民間企業でも、福利厚生が手厚いところ、公務員より給与面が大きく上回るところがあるが、世界的にも情勢不安定ななか、安定感のある「公務員という仕事」は魅力的であり、多くの人が羨望のまなざしを向けているのも事実だ。

すべての公務員が「安定」しているわけではない

ところが、一部の当事者からは「見当はずれ」との声も聞こえる。

 

日本自治体労働組合総連合(自治労連)は、全国の地方自治体で働く1万4,000の非正規公務員に行ったアンケートでは、59.3%が「年収200万円未満」と回答。手当を考えなければ、月16万~17万円といったところだろう。

 

アンケート回答者の8割強は女性で、職種は事務や保育士、放課後児童支援員等が多かった。また、家計を支える生計維持者であっても、その半数は年収200万円未満と回答。ライフスタイルによるものの、その金額で十分暮らしてけるかどうか疑問符がつく。この数字を見る限り「公務員=高給で安定的」という構図は見えない。


非正規の公務員については、2020年4月に「会計年度任用職員」が導入された。これは地方公務員法第22条の2の規定に基づき任用される非常勤職員で、これまでの臨時的任用職員や非常勤の特別職員より福利厚生等が拡充される一方、服務規律が適用され、懲戒処分等の対象にもなりうる立場だ。


福利厚生の拡充と聞けばメリットがあるように感じるが、採用が1年ごとに厳格化されたことにより、かえって雇用の不安定さが増したという声が多く上がっていると聞く。そこには「公務員=雇用が安定」というイメージはない。

 

「正規雇用」と「非正規雇用」の格差について、昨今ではたびたび激論が交わされているが、そんな問題とは無縁と思われていた「公務員」にも、同様の深刻な問題が内包されていたのである。「官製ワーキングプア」という言葉もあるほどだ。

 

われわれの日々の生活を支え、目を配ってくれる行政サービス。その質が担保されるよう、非正規公務員の待遇改善が切望されている。

 

幻冬舎ゴールドオンライン編集部

 

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