「定年後も働く人」が増加中
内閣府『令和4年版高齢社会白書』によると、労働力人口に占める「65歳以上の者」の比率は年々上昇しています。また、「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」という質問に対し、60歳以上の約4割が「働けるうちはいつまでも」と回答しました。
なぜ、定年後も収入の伴う仕事を続けたいのか。内閣府は高齢者白書にて「仕事をする理由は年齢が上がるほど多様化する」と指摘しつつ、「収入がほしいから」という回答が最多です(令和2年度版では45.4%、令和3年度版では51.0%)。
ディップ株式会社が運営する「はたらこねっと」では、定年前の現役世代でさえ約6割が「定年後も働きたい」と回答しており、そのうちの62%が「生活費・扶養費のため」を理由に挙げました(出典:「はたらこねっと 定年後の働き方について-みんなの声レポート- https://www.hatarako.net/contents/enquete/result/201810/」)。
定年を迎えてもなぜ働くのか。令和4年度版高齢者白書にこの調査項目はありませんでしたが、働く高齢者の多くが経済的理由を事情としていることは想像にかたくないでしょう。
ただし、60歳台になると給与はガクッと減額
とはいえ、60歳以降の労働には厳しい現実が待ち受けています。冒頭の『令和4年版高齢社会白書』で見たように、高齢者の雇用は右肩上がりで上昇しています。しかし肝心の給与水準は、60歳台になると大きく下がってしまうのです。
国税庁『令和3年分 民間給与実態調査』によると、年齢階層別の平均給与は次の通りです。
<男性の平均給与>
55~59歳 687万円
60~64歳 537万円
⇒150万円の落差
<女性の平均給与>
55~59歳 316万円
60~64歳 262万円
⇒54万円の落差
年齢階層が「55~59歳」から「60~64歳」に変わったとたん、これだけの落差が生じます。働き口があるだけマシ、という考え方もあるかもしれませんが、今の生活費を切り詰めつつリタイア後のお金も蓄えていくとなると、心身の負担は大きくなるばかりです。60歳以降の収入ダウンを抑える方法はないのでしょうか?
「60歳以降に減った収入」を補う制度
サラリーマンが加入している雇用保険には、「高年齢雇用継続給付金」があります。60歳時点に比べて賃金が75%まで下がった場合、減った分の給料の一部を補填するという制度で、65歳までの雇用継続を補助・促進することを目的に設けられました。
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【必須要件】
①60~65歳の一般加入者であること(※再就職者も可)
②雇用保険料を5年以上払っていること
③60歳のときに比べて賃金が75%未満に低下していること
④再就職者:再就職する前に雇用保険(基本手当等)を受給した場合、基本手当の残り日数が100日以上であること
【給付額はいくら?】
原則、60歳以降の給料(=減ったあとの給料)の15%が補填されます(※ただし令和7年4月から10%に引き下がる予定)。
【注意点】
高年齢雇用継続給付金の受給期間は「65歳になるまで」、受給期間は最大5年間(60歳から給付開始した場合)となります。
ただし、いったん離職して雇用保険(基本手当等)を受給していた再就職者の場合、受給期間は基本手当の残り日数に応じて決まります。大前提として受給期間は「65歳になるまで」ですが、基本手当の残り日数が200日以上であれば受給期間は1年間、残り日数が100~199日であれば受給期間は2年間となります。
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ここで、もう一度さきほどの年齢階層別の平均給与を見てみましょう。
<男性の平均給与>
55~59歳 687万円
60~64歳 537万円
⇒60歳台で78%まで低下
<女性の平均給与>
55~59歳 316万円
60~64歳 262万円
⇒60歳台で82.9%まで低下
上記では条件③(60歳時点に比べ賃金が75%未満)を満たしていませんが、上記の平均給与はあくまで民間事業所の従業員(非正規含む)・役員すべての数値です。高年齢雇用継続給付金の需要が高そうな「定年後再雇用」や「再就職者」に絞った数値を出せば、減収率はさらに大きくなるでしょう。
高年齢雇用継続給付金の受給期間は長くはありません。受給可能な場合はいちはやく活用できるよう、頭の隅に入れておくとよいでしょう。
まとめ:60歳以降の収入ダウンに備えよう
定年後も働き続けることができても、収入が大幅ダウンすることは珍しくありません。さらに言うと、60歳以降、収入はさらに下がり続ける傾向にあります。
再雇用で収入が減ってもダメージを抑えられるよう、高年齢雇用継続給付金にかぎらずいざというとき活用できそうな制度を調べておき、収入ダウンに備えることをおすすめします。
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