名ばかり管理職が未払い残業代を請求する手順
名ばかり管理職の方は、これまで見てきたように、時間外手当や休日出勤手当を請求することができます。しかし、会社側は管理職として扱っている以上は、あなたが行動をおこさなければ、これを獲得することはできません。
具体的には、名ばかり管理職が残業代を請求する手順は、以下のとおりです。
手順1:名ばかり管理職の証拠を集める
手順2:残業代の支払いの催告をする
手順3:残業代の計算
手順4:交渉
手順5:労働審判・訴訟
それでは、順番に説明していきます。
■手順1:名ばかり管理職の証拠を集める
名ばかり管理職の方が残業代を請求するためには、まず名ばかり管理職の証拠を集めることです。
名ばかり管理職としての証拠としては、例えば以下のものがあります。
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①始業時間や終業時間、休日を指示されている書面、メール、LINE、チャット
⇒始業時間や終業時間、休日を指示されていれば、労働時間の裁量があったとはいえないため重要な証拠となります。
②営業ノルマなどを課せられている書面、メール、LINE、チャット
⇒営業ノルマなどを課されている場合には、実際の職務内容が経営者とは異なることになるため重要な証拠となります。
③経営会議に出席している場合にはその発言内容や会議内容の議事録又は議事録がない場合はメモ
⇒経営会議でどの程度発言力があるかは、経営に関与しているかどうかを示す重要な証拠となります。
④新人の採用や従業員の人事がどのように決まっているかが分かる書面、メール、LINE、チャット
⇒採用や人事に関与しておらず、社長が独断で決めているような場合には、経営者との一体性がないことを示す重要な証拠となります。
⑤店舗の経営方針、業務内容等を指示されている書面、メール、LINE、チャット
⇒経営方針や業務内容の決定に関与しておらず、社長が独断で決めているような場合には、経営者との一体性を示す重要な証拠となります。
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■手順2:残業代の支払いの催告をする
残業代を請求するためには、内容証明郵便により、会社に通知書を送付することになります。理由は以下の2つです。
●残業代の時効を一時的に止めるため
●労働条件や労働時間に関する資料の開示を請求するため
具体的には、図表7のような通知書を送付することが多いです。
■手順3:残業代の計算
会社から資料が開示されたら、それをもとに残業代を計算することになります。
■手順4:交渉
残業代の金額を計算したら、その金額を支払うように会社との間で交渉することになります。
交渉を行う方法については、文書でやり取りする方法、電話でやり取りする方法、直接会って話をする方法など様々です。相手方の対応等を踏まえて、どの方法が適切かを判断することになります。
残業代の計算方法や金額を会社に伝えると、会社から回答があり、争点が明確になりますので、折り合いがつくかどうかを協議することになります。
■手順5:労働審判・訴訟
交渉による解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判所を用いた手続きを行うことになります。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1ヵ月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
管理職になって「私の給料、安すぎ…?」と悩んだら
残業に悩んでいる管理職の方は、一人で抱え込まず法律事務所にご相談することをおすすめします。法律事務所によっては「初回相談無料」「完全成功報酬制」を採用し、少ない負担で気軽に相談できるところもあります。
管理職の残業代請求については、経営者との一体性や労働時間の裁量、対価の正当性について適切に主張を行っていく必要があります。
また、残業代請求については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきますので、管理職の残業代請求について圧倒的な知識とノウハウを蓄積した法律事務所を選ぶことがポイントです。
籾山 善臣
リバティ・ベル法律事務所 代表弁護士