「生活保護減額」に画期的な違法判決!行政とトラブルになったらどうする? (※画像はイメージです/PIXTA)

神奈川県内の生活保護受給者らが、生活保護の減額決定の取消しを国・自治体に求めた訴訟で、2022年10月19日、横浜地裁は、減額決定を「違法」とする判決を下しました。今回の判決には注目すべき画期的な点があります。社会保障制度の縮小や年金の給付水準の引き下げが問題となっているなか、今後、万が一、国・地方自治体とトラブルになった場合に有益なヒントがあります。本記事で解説します。

最高裁判例(堀木訴訟判決)の判断枠組とは?

今回の横浜地方裁判所の判決について解説する前に、前提として、社会保障制度に関するリーディングケースとされる最高裁判所の判例「堀木訴訟判決(最判昭和57年(1982年)7月7日)」について説明します。

 

事案の概要は、兵庫県在住の視力障害者である原告が、障害福祉年金を受給していたのに加え、母子家庭だったので児童扶養手当の受給を兵庫県知事に請求したところ、公的年金との併給禁止規定があったため、拒否処分を行ったというものです。

 

原告は、この拒否処分が生存権を保障した憲法25条等に違反するとして提訴し、最高裁まで争われました。

 

最高裁は原告敗訴の判決を下しました。そのロジックは以下の通りです。

 

・憲法25条1項が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定しているのは、国の立法や施策等に関する責務を定めたものであり、同条項を根拠に国民が国の立法の不備を争うことはできない(プログラム規定)

 

・「健康で文化的な最低限度の生活」はきわめて抽象的・相対的な概念である

 

・国が生存権の保障を立法によって具体化するにあたっては、財政事情を考慮に入れ、高度の専門技術的な考察とそれに基づく政策的判断が必要とされる

 

・したがって、立法に際しては、国会には広い裁量があり、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用である場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない

 

つまり、裁判所は国会の判断を尊重しなければならず、よほどのことがない限り違憲・違法についての判断ができないとしているのです。

 

なお、この判決文は国会の立法に言及しているのみですが、行政府が法令に基づいて行う個別具体的な処分についてもあてはまるとされています。

 

この判例の判断枠組の背景には、三権分立の観点から、国会(立法府)や政府(行政府)の裁量を尊重すべきという考え方があります。

 

すなわち、実態はともかく、あくまでも建前上は、国会は、国民による直接選挙において選出された国会議員により構成されていることになっています。また、政府は国会により選出された内閣総理大臣によりコントロールされていることになっています。

 

これに対し、裁判所は「三権」のなかで唯一、そういった民主的な基盤が希薄だとされています。したがって、裁判所は国会や政府の「裁量」を基本的に尊重せざるをえないということです。

 

この考え方からすれば、生活保護の給付額をいくらに設定するかについても、国会・政府には広い裁量が認められ、裁判所はよほどのことがない限り、違憲・違法の判断ができないということになります。きわめて「ゆるゆる」な基準といわざるをえません。

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