日本企業の実に99.7%が中小企業
中小企業庁の発表によると日本の中小企業数は約358万社にのぼり、総企業数の99.7%を占めています。また従業員数は約3,220万人でこれは日本の雇用全体の約7割を担っていることになります。
この数字を見ても中小企業が日本および地域の産業と社会を支える極めて重要な存在であることは改めていうまでもありませんが、その多くが苦境に立たされる状況になって久しく、現在も2年以上に及ぶ新型コロナウイルスのパンデミックによる消費減退、原油や原材料価格の高騰によるコストアップ、部材調達難に起因する生産活動の停滞、深刻な人手不足、後継者の不在といった、さまざまな要因が重なり厳しい経営を余儀なくされています。
企業倒産件数としては2008年のリーマンショック後をピークに減少傾向にあるものの、休廃業・解散を選ぶ中小企業は2016年以降毎年4万件を超え、2021年にはコロナ禍の影響も手伝って4万4,377件と2000年の調査開始以降3番目に高い数字が報告されています(中小企業庁「中小企業白書・小規模企業白書(2022年版)」)。
なぜ日本の産業を支えている屋台骨が存続に苦しんでいるのか。その理由は手本となる欧米企業にキャッチアップすることで成長を遂げてきた経済構造から転換できていないこと、そして日本の中小企業の多くが下請けだということです。
大企業はバブル後、下請けを国内から海外にスイッチ
日本の中小企業のうち下請けの割合は全体の47.9%となっており、実に半数近くが下請けです(経済産業省「商工業実態基本調査」)。地域別に下請け企業の割合を見ると最も多いのは岐阜県の70.9%で、次いで福井県の63.1%、長野県と山梨県の59.0%、石川県の58.7%となっており、私の会社がある宮崎県は30%ほどとなっています。
日本の製造業では親企業を頂点として一次、二次、さらに三次と下請け企業が連なるピラミッド型の下請け分業構造が一般的で、親企業である大手企業は下請け企業の専門性の高さや技術力、小回りの利く生産体制を活用して研究開発投資や設備投資負担を抑えています。そればかりか大手企業は下請け企業をもつことで生産のピークに合わせた大きな労働力を抱えずに済むというメリットも享受してきました。
また下請け側の企業も親企業の営業力や企画開発力を武器にして営業活動を行ったり、自社で高度な研究開発を行わなくても常に安定した受注を確保できるというメリットを享受してきたのです。
つまりもちつもたれつという関係で相互に補完し合いながらそれぞれが成長の道を歩んできたということであり、このピラミッド型の分業構造こそが高度経済成長期の世界市場において日本の製造業を上位へ押し上げたといえます。
戦後間もなくの経済復興期から1980年代にかけて日本は内需を中心に市場の拡大が続き、大量生産・大量消費の経済を好調に回してGDP世界第2位へと上り詰めました。それを縁の下から支えたのが下請け企業であり、系列化されたピラミッド型の産業構造で大いに日本全体が潤いました。
しかしバブル経済崩壊後の国際環境の劇的な変化のもとで、日本の成長を支えてきた下請け分業構造も大きな変化に見舞われました。親企業はグローバルな市場環境のもとで競争力を高めるために、少しでも安く雇用できる労働者を求めて海外の労働市場を視野に入れ、国際的な分業体制の構築に乗り出しました。
そして従来の下請け企業との固定した分業体制を見直し、より低コストで生産できて利益が確保できるように海外の労働力を求めて舵を切り出したのです。