単に「発達障害だから」ではない。「発達障害の子」が学校で“生きづらい”理由【専門家が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

発達障害は必ずしも短所や困りごとにつながるとは限りません。環境や人間関係によっては、生活に支障が出ない場合もあります。発達障害のある子が学校でのびのびと学ぶためには、何が重要なのでしょうか。臨床経験30年以上の発達障害の専門家・本田秀夫医師の著書『学校の中の発達障害』(SBクリエイティブ)より、「発達障害の子は、どうして学校で困っているのか」を見ていきましょう。

そもそも「学校の標準」が狭すぎるのではないか?

発達の特性は必ずしも困りごとにつながるものではありません。しかし発達の特性がある子は学校生活において、何かと困りごとに直面しがちです。ほかの大多数の子どもよりも、困難が多いように感じます。それはなぜでしょうか。

 

私はその要因の一つに「学校の標準が狭すぎること」があると考えています。いまの日本の学校には、子どもが「標準的にやるべきこと」が多すぎます

 

子どもは持ち物をそろえて始業時間までに登校し、提出物があれば先生に渡す。登校の際には先生や学校の職員、友達に元気よく挨拶をする。授業が始まったら席に座って、正しい姿勢で静かに先生の話を聞く。授業中にはノートをとり、適度に発言や質問をする。道具は自分の机やロッカーに丁寧に片づける。そして放課後にはその日の宿題に取り組む…そのような行動をすべて着実にこなすことが、「学校の標準」になっていないでしょうか。

 

出所:本田秀夫著『学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち』(SBクリエイティブ)より
「標準的にやるべきこと」が多い学校生活 出所:本田秀夫著『学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち』(SBクリエイティブ)より

 

私は、いまの学校では子どものやるべきこと、守るべきことが多すぎて、「標準」が狭くなっているように感じます。その「標準」をこなせる子はよいのですが、発達の特性がある子は、すべての活動を「標準」に合わせるのは難しい場合もあります。

 

例えば「不注意」の特性が強くてそそっかしい子は、いくつかの場面で「標準」に当てはまらず、はみ出してしまうこともあるでしょう。そのような形で、子どもの困りごとが増えているという側面があります。

「学校内のローカルルール」は少ないほうがいい

学校には多くの子どもたちが集まっています。集団で活動するためには、一人ひとりが一定のルールを守ることが欠かせません。ですからなんらかの「標準」は必要です。子どもたちが学校で集団行動のルールを学ぶことには、意味があると思います。

 

しかし、ルールが細かくなりすぎると、それがいじめの温床になることもあります。例えば「校舎内の廊下は左側を歩きましょう」という決まりをつくることは、衝突を避け、人の流れをスムーズにするためには有効です。しかし、それを破ったら罰を与えるような厳しいルールにしてしまうと、ある子どもが右側を歩いたときに、ほかの子がそれを強く注意したり、先生に言いつけたりすることが出てきます。ルールから少し外れただけで、非難するような風潮ができていくわけです。

 

そのような環境では、ルールからはみ出すことが多い子はいつも誰かに注意され、監視されるようになっていきます。結果として、その子は学校生活に不安や緊張を感じるようになり、また、場合によっては、その子だけがいじめられているような状態になってしまうこともあるのです。

 

私は、学校内のローカルルールは、少なければ少ないほどよいと思っています。

 

子どもたちが社会性を学ぶことは重要ですが、そのために大人がやるべきことは、あれこれと細かいルールを設定して、子どもに押しつけることではありません。大人・子どもを問わず守るべきルールは、国の法律や自治体の条例だけで十分です。

 

子どもが法律をきちんと学び、結果として、法律は家庭生活や学校生活にも活かされているのだということを学べば、それで十分でしょう。法律を学べば、人を傷つけてはいけないということを理解できます。「誰かがルールを守らなかったからと言って、その人をいじめてはいけない」ということも理解できるはずです。

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    信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 教授
    同附属病院子どものこころ診療部 部長
    特定非営利活動法人ネスト・ジャパン 代表理事 

    精神科医師。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。

    2018年より現職。日本自閉症スペクトラム学会会長、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。

    著書に『自閉症スペクトラム』『発達障害生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』『子どもの発達障害』(いずれもSB新書)などがある。

    著者紹介

    連載学校の中の発達障害 ~発達障害の子の学校生活をサポートするために、親と先生ができること

    ※本連載は、本田秀夫氏の著書『学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち

    学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち

    本田 秀夫

    SBクリエイティブ

    【「学校・学級選び」「友だち関係」「勉強」「登校しぶり」…子どもたちの困りごとをすべて網羅!】 発達障害の子は「多数派」「標準」「友達」に合わせなくてもいい――これは、「発達障害の子に世間一般の基準に合わせる…

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