周りのことを考えない「トラブルメーカー」の末路
以上がこの事案の概要です。この事案について、裁判所はまず、迷惑行為が契約違反に該当するかという点については、
「隣室から発生する騒音は社会生活上の受忍限度を超える程度のものではなかったのであるから、共同住宅における日常生活上、通常発生する騒音としてこれを受容すべきであったにもかかわらず、これら住人に対し、何回も、執拗に、音がうるさいなどと文句を言い、壁を叩いたり大声で怒鳴ったりするなどの嫌がらせ行為を続け、結局、これら住人をして、隣室からの退去を余儀なくさせるに至った」
として、騒音に対する賃借人のクレーム等の行動は正当な理由がないものと判断しました。
そのうえで、この賃借人の行為は、
「本件賃貸借契約の特約において、禁止事項とされている近隣の迷惑となる行為に該当し、また、解除事由とされている共同生活上の秩序を乱す行為に該当するものと認めることができる。」
と述べて、契約違反に該当すると認定しました。
そして、この迷惑行為が信頼関係を破壊する程度のものか否か、という点については、
「賃借人の右各行為によって、506号室の両隣りの部屋が長期間にわたって空室状態となり、賃貸人が多額の損害を被っていることなど前記認定の事実関係によれば、被告らの右各行為は、本件賃貸借における信頼関係を破壊する行為に当たるというべきである。」
と述べて、契約解除を認めました。
なお、この賃借人は、このマンションに移ってくる前の物件でも、隣室や上階の入居者に対して音がうるさいなどと言ってトラブルを起こし、その物件の賃貸人から訴訟を起こされていた(結果は和解で退去)、というかなり曰くつきの賃借人であったことも判決で認定されています。
この事案の賃借人はかなり特異な賃借人ともいえるのですが、迷惑行為が解除事由となる1つの基準として「その賃借人の迷惑行為によって、複数の近隣入居者が退去してしまったこと」を示した裁判例として参考になります。
北村 亮典
こすぎ法律事務所
弁護士
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